縦横無尽のアプローチ:立花隆氏の「臨死体験」(おすすめ本)
さて、臨死体験に関する記事を続けます。
今回は、日本人による臨死体験に関する著書の中でも、古典的名著を紹介します。
それは、立花隆氏の「臨死体験」という本です。
文庫本では、「臨死体験〈上〉」「臨死体験〈下〉」に分かれており、各々が500ページくらいあるため、たいへんに読みごたえがあります。
立花隆氏といえば、「田中角栄研究」のような政治物から、「脳死」など医学系の本、「宇宙からの帰還」などのサイエンス物、「ぼくはこんな本を読んできた」などの読書の奨めとでも言えるような分野など、本当に幅広い分野の本を書いておられます。
何でも自宅には10万冊の本がある、と聞いたことがありますが、本を読むと同時に取材もバリバリにこなす、そのバイタリティはものすごいものだと思いますね。
本書の中で、立花氏は、科学的知見をふんだんに取り入れながら、臨死体験研究者(著者)や臨死体験者などへのインタビュー、膨大な量の書籍を引用した推察などを
重ねていきます。インタビュー対象者で言うと、前述のレイモンド・ムーディー博士、エリザベス・キューブラー・ロス博士などの先駆けとも言える方にもしっかりとインタビューされています。
この本で扱うジャンルは極めて幅広く、医療関係者の知見、脳生理学、心理学、共感覚、超能力、ヨーガ、密教、UFO、水晶占い、アイソレーション・タンク、民間伝承の研究など、まさに縦横無尽に、時には自身の体験も交えながら、探究、研究、推察を加えていきます。個々のエピソードを紹介するには、あまりにも量が膨大で、面白く、選択することが難しいです。
とは言いつつ、一点だけ紹介します・・
この本の中では、ヘミシンクにも触れられているのですよ!(下巻 P.207~)
何と、フォーカス10という概念も出てきます。
また、立花氏がまとめた要諦の中では、恐怖心を取り除くこと、リラックスすることなどの大切な点なども記述されています。(下巻 P.220)
残念なのは、立花氏が実際にヘミシンクを体験されたのではなく、ロバート・モンローの「体外への旅」を読んでからの記事なので、「ヘミシンクが体外離脱専門技術だと誤解されないかなと思えること(本書のテーマでは仕方ない面があるとは思いますが)」「モンローの実験結果に対する証拠能力に若干の疑問を呈していること」「音声刺激により体外離脱が誘発できるということから、体外離脱は脳内現象かもしれない」という示唆があることです。
この本では、上記のエリザベス・キューブラー・ロス博士が、ロバート・モンローの主催するセミナーに参加してから、その後の体験が深まった!と記述もあります。
なので、立花隆氏もヘミシンクを体験されたらよかったのにな、とは思いましたね。
最後に、この本でも、臨死体験は「脳内現象」なのか「現実体験」なのか、という視点を持ち、注意深く反証を加えながら説を進行させています。
立花氏は、脳内現象寄りの気持ちを持ちながらも、現実体験説を捨てられない、と言っています。
けれども、ここでも最後に、もっと大切なことがあると語られています。
多くの体験者は、未知であった「死が怖くなくなってきた」、それゆえ「生きている間には、生きている間にしかできないことを、思い切りしたいと思うようになった」ということです。
その通りだと思います。