「教育の形を完全習得学習に変える」という、カーンさんのアツい教育論 -ルポMOOC革命-

 

本日は、MOOCという形態を取りながら「教育の形を変えた男」と呼ばれるサルマン・カーンさんのお話をさせて頂きます。

カーンさんは、元ヘッジファンドのアナリストです。元々は2004年、カーンさんのいとこに、(インターネットを利用して)遠隔で算数を教えたことがきっかけだったと言います。さらに親戚たちからのリクエストに応えるかたちでYou Tubeで講義ビデオを公開したところ、それが様々なところから反響を呼ぶこととなり、2008年に教育NPO「カーンアカデミー」を立ち上げました。

 

2013年時点では、ビデオ数5000本、ユニークユーザー月1000万人、3億回再生されるという規模に成長しています。英語で講義されていますが、日本語字幕付のものも600本以上あります。ビデオにカーンさんは映らず、電子黒板のみが映ります。カーンさんが解説しながら、ペンで文字を書き込む、という形で講義は進められます。1本の講義の長さは10分程度です。

カーンさんの教え方は秀逸でわかりやすく、学校でも使われるようになっています。

運営費は年間700万ドル(7億円以上!)かかるようですが、あのビルゲイツ財団はじめ、様々なファンの方などから寄付を受けて運営されているようです。これだけ社会意義が高いと、多くのファンが付き、寄付で十分に持続可能になるのですね!

 

カーンさんは、そのアツい教育論が特徴でしょうか。現在の、30~40人教室による同時一斉教育を痛烈に批判されます。

曰く、大人数の同時教育では、いったん分からなくなった子供は落ちこぼれたままになる危険性があります。特に、積み上げ式の数学などでは、分かっていなくても次に進められてしまうと、そのまま落ちこぼれてしまう危険があります。また逆に、すぐに講義を理解できるような子供も、同時教育ゆえ、そこにおし留められてしまいます。

 

カーンさんは、完全習得学習=反転授業を提唱されます。

生徒は、この講義ビデオを教室外などで、いつでもどこでも良いので視聴して学びます(課題なども出ることがあります)。そして教室では、不明な点について先生に聞いたり、教材を元に討論するのです。つまり、対面した時にしかできないことを教室で行うのです。

そのメリットは、理解度の異なる生徒が、それぞれのペースで課題に取り組める点にあります。

 

さて、今まで良い点のみを挙げてきましたが、この手法では懸案もあります。

・果たして生徒が家でちゃんと講義を聴くのか?
・先生にも高いスキルが求められる。
・この形態は、少人数クラスでこそ効果が現れる。が、それを実現できるのか?

などです。

課題を授業前にやっておき授業では討論を行う、という形式は、大学院などでは一般的に実施しているので、特段新しい形式ではありません。

私自身も経験していますが、

・学生は、自身で熟考し緊張感を持って授業にのぞむので、
 受け身の授業より記憶に残っている。

・多人数すぎると議論が発散し、今一つ話が深まらない。

などの印象を持っています。

 

すでにアメリカの幾つかの学校では、この反転的な授業を取り入れているといいます。興味深く推移を見守っていきたいですね。

カーンさんのお話は、ルポ MOOC革命にもありますが、ご自身でも世界はひとつの教室という本を出版されています。

 

 

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