「ルーム・トゥ・リード」にみる【社会起業のための優れた点】について考察しました

ジョン・ウッド氏が設立したルーム・トゥ・リードについて、さらに書かせて頂きます。

 

さて、このマイクロソフトでは出会えなかった天職を拝読してみて、ルーム・トゥ・リード」の特徴は次のような点ではないかと思います。これは、多くの社会起業の成功のための条件にもなるかと思います。

 

1.現地で働く優秀なパートナーがいること

これは税所氏のe-Educationも同様ですが、現地に強い人の存在は重要です。さらには、そのパートナー自身も、次のパートナーを要請すべく、人材育成の重要さ、仕組み作りの大切さを意識することが大切ですね。

 

2.現地との共同出資モデルであること

援助対象国の地域社会と協力し、共同出資モデルを作って、学校、図書館、パソコン教室、奨学金のシステムなどを進めていく。共同出資とは、援助対象側も少額の資金提供であるとか、労働力の提供をする、ということです。ネパールの例では、村側が半分の資源を提供し、ルーム・トゥ・リード側が半分の資源を提供します。村の人々はお金の余裕はないため、労働力を提供します。

一方的に提供するのではなく、共に作っていくことが大切なのだろうと思います。

また、印象的には、この本では、ジョンの資金繰り、資金集めに関するエピソード・考え方の比重が高いように思います。それだけ彼の中での関心事だったのでしょうし、重要である、ということだと思います。また、「コストをかけない」ということへの意識も高いです。お金の流れについてよく検討されていると思います。

 

3.マイクロソフトの社風をしっかりと取り入れていること

本のタイトルを見ると、「マイクロソフトでは、有意義な充実した生活を得られなかった」かの印象を受けますが、そんなことはありません!

そもそも原題は、そんな事を書いていません。単に「世界を変えるためにマイクロソフトを去った」とあります(それでもかなり大仰なタイトルでもありますけどね)。

ジョン自身が、ビル・ゲイツやスティーブ・パルマーに大きく影響を受けた、と書かれていますし、ルーム・トゥ・リードにマイクロソフトの文化を取り入れた、ともあります。

さらには余談ですが、本の中で、ビル・ゲイツやスティーブ・パルマ―とのエピソードを通じて、彼らの「人となり」も分かり、この本のアクセントともなっており、面白く読めました。

 

4.とは言え、飛び込んでみることが大切である

本の最後に書かれていますが、ジョンのアドバイスとして次のように書かれています。

世界を変える手助けをするために、自分の人生を少し変えてみようと思っているなら、僕のアドバイスを一つ。考えることに時間をかけすぎず、飛び込んでみること。 (中略) それ(考えること)に時間をかけすぎると勢いを失ってしまうのだ。

ここで注意点は、「考えることそのものは否定されていない」という点です。

考えることは大切です。

が、飛び込むことも大切です。

通常、何か新しいことを行おうとしている場合、抱えているローンの返済、多くの人から「夢をあきらめるよう説得される」など、流れを止める方向への圧力に溢れています。「放っておいても変化を止める方向の流れが強い。これに対し、飛び込んでみる、という勢いをしっかりと持つことで、ようやく五分五分位のバランスとなる」ということではないかと思います。

この本は、社会起業スタートアップ物語の中でも、資金調達、財務管理など、経営の大切さに関する記述の比重が高めの本だと思います。マイクロソフトでディレクターをされていただけに、経営的視点に溢れた起業物語です。また、前述の通り、マイクロソフトの社風、トップの人となりも知れて興味深いです。

 

 

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