【チベットの死者の書】 -心理学やヘミシンクとの興味深い共通点-
さて、前回「チベットの死者の書」のあらましをご紹介をさせて頂きました。
今回は、この本の最後の部分「文庫版解説」を参照しながら、「とある考察」をさせて頂きます。
一つ目は、心理学と絡めた考察です。
実は。
あのユングも、この本に深く深く関心を持って研究していました。
「東洋的瞑想の心理学」(創元社、1983年)として解説書まで書かれています。
ご紹介しましょう。
チベットの死者の書には、次のような興味深い記述があります。
中有の最後、解脱できなくて、母の胎内に入り再生しようとする場面です。
もし汝が男として再生する場合には
〈自分が男である〉との思いが強くなる。
そして交歓する父母の父に対しては激しい敵意を生じ、
母に対しては嫉妬と欲情を生じるであろう。
もし汝が女として再生する場合には
〈自分が女である〉との思いが強くなる。
そして交歓する父母の母に対しては激しい羨望と嫉妬を感じ、
父に対しては強い愛情と渇抑の気持ちを生じるであろう。
この場面の後、なぜか子犬として生まれ変わるようですが、それはさて置き・・
いかがでしょう?
これを読むと、フロイトのエディプス・コンプレックスを思い起こしますね。
20世紀の心理学的発見が古典的な本で語られていたのです!
男性と女性で抱く感情が微妙に異なっているのも興味深いですね。
また、ユングは、中有の49日間を
再生から逆、終わりから前、に読んでみることを勧めています。
そうすることで、フロイトが言及したエディプスコンプレックスを超えたより深い領域=集合的無意識の世界に入り込めることを示唆しています。
集合的無意識に入り込み、統合されていく過程に関する大きなヒントになったのではないかと推察されます。
実際にユングは、この書以外にも易経、曼荼羅等々、東洋的な思想を研究しながら、さらに探究を進めて行き、現在知られている集合的無意識の理論を完成させていますね。
東洋思想は真理の宝庫なのかもしれません。
次は、手前味噌、かつ僭越ですが。
チベットの死者の書とヘミシンクの宇宙観についても考察させて頂きます。
先日の記事にも書かせて頂きましたが、チベットでは、死後、中有の(最長)49日の間に、解脱の道、もしくは天人に生まれ変わる方法、換言すれば選択の方法が示されていました。
実はヘミシンクでも、フォーカス27にて再生か卒業かを選択できる、という概念があります。
死後の世界において、しっかりと知識を持ったうえで、選択により次の生(再生、卒業とも)を選ぶことができる、という点にチベットの死者の書との共通点を感じます。
また、チベットの死者の書に示される中有の世界は、(ヘミシンクの概念である)フォーカス間を移り変わっているのか、フォーカス27にある様々な場(機能)を体験しているのか、その辺りはよくわかりませんが、それにしても、十分に対比できる世界のように思えます。
興味深いですね。