岸見一郎氏【嫌われる勇気】等より、アドラー心理学・哲学についてまとめてみました(自身の備忘録として)
今さら、かもしれませんが、最近、岸見一郎氏の大ベストセラー本「嫌われる勇気」およびその続編「幸せになる勇気」を読んでみました。
これに加え、アルフレッド・アドラー本人による著書「なぜ心は病むのか いつも不安なひとの心理」も同時に読んでみました。
今回は、これらの本から、アドラー心理学・哲学の考え方を、備忘録的に私なりにまとめてみました。
まずは、
【アドラー心理学・哲学の基本的な考え方】とは
人は「社会のなか(≒対人関係)」でおいてのみ、「自立した個人」となり得る。
すなわち、わたしたちは人生において、仕事、社会(交友)、愛という3つの課題(人生のタスクとも言います)に向き合い、正しく育てることで、社会(共同体)の一員として幸福に生きていけるのである。
「わたしたちは、社会、すなわち人間関係のなかで成長していく存在である」との視点が、アドラー心理学・哲学の大きな特徴です。
そして、
【アドラー心理学・哲学を支える大前提】として、
わたしたちは誰もが、そのような人生の課題(仕事、交友、愛)を解決する力を持っており、自立した個人として幸福になれるのだ。
わたしたちは課題を解決する力を持っている、という「人間に対する信頼感」が根底にあるのです。
このような基本、前提を元にして、さらに続けて、大切なキーとなる概念、ワードについても書いてみます。
まずは、
【ライフスタイル】とは、
その人の「人生のあり方」であり、人がその人生に適応するときの大本となる信念(自己や世界についての意味づけ)のことである。
目的論を採用するアドラーですが、その人の「反応の仕方のクセ」というか、適応の仕方は「生まれてから4~5年かけて、母親など周りの環境から作られていく」と言います。
以後、人は独自に身につけたライフスタイルによって、無自覚な態度で周囲に適応、対応していくこととなるのです。
この考え方に触れて私は、認知行動療法で言う「自動思考の元となるもの=その人の基本的な価値観、考え方、反応様式」のようなものが想定されているのかな、と感じました。
さらに大切なワードとして、
【目的論】とは、
人は通常、自ら経験してきたもののなかから、現在の自分の「目的」にかなうものを都合よく見つけ出して反応・行動する、という考え方のこと。
例えば、「具合が悪くて、外に出たくない」と言っている人は、「外に出たくない」という目的が先にあって、目的を達成するための手段として、不安や恐怖をつくり出しているのである。
わたしたちは普段、何かの出来事、それも悩ましい出来事に遭遇すると、その原因を探ろうとします。原因論的な考え方を持っているということです。
が、アドラーは、わたしたちの対応のすべてにおいて、背後に何かの目的を持っていて、その目的を達成するための手段として、病気や過去のトラウマ的な出来事(の記憶)を都合よく持ち出しているのだと言うのです。
なかなかに厳しい見解です。
この目的論を知ってわたしは、正直なところ、本書を読んだ今でも、日常のすべてを目的論に還元するのは、少々極端かな、という気はします。
が、多くの場合で当てはまる、その人の気づきとなり得る考え方だとは思います。
それから、
アドラーを理解するうえで大切な概念として、さらに次の考え方があります。
【劣等感、優越性の追求】
無力な存在として生まれたわたしたちは、誰もが「劣等感」を持っている。
と同時に、わたしたちは無力な状態から脱し、より向上すること(成長)を目指したいという根源的な欲求を持っている。自らの足を一歩前に踏み出す意思を持っている(自分を優越していく=優越性の追求)、
ということです。
こういった成長志向を持っているわたしたちですが、この劣等感を他者との比較において誤って利用してしまうことが多々あり、これがアドラーの言う「あらゆる悩みは『対人関係』の悩みである」という点に結びつきます。
具体的には、
自らの劣等感を「自分が一歩踏み出さないことの言い訳」に使おうとしたり(=劣等コンプレックス)、他者と比較し他者より優位になろうとするという「誤った優越性の追求」をしてしまうのです。
現代社会とは、「承認不安の時代」と言われるように、他者の視線が気になり、他者のなかで認められようとする欲求が強い時代であり、わたしたちの日常は他者との比較に終始していると言って良いでしょうね。
さて、そのような悩ましい状況にある時、アドラー心理学・哲学では、
では、わたしたちは今後どうすればよいのか?
と前を向くのです。
この時、2つの概念が重要になってきます。
1つは「勇気づけ」。
まずは今の自分(例えば、現状にとどまろうと、チャレンジから逃げている自分)を受け入れ、そのうえで前に向けて踏み出せるよう、勇気を持つことが大切である。
勇気づけは、アドラー心理学・カウンセリングにおいて、とても大切な概念となる。
そしてもう一つが「共同体感覚」。
上述の通り、人間とは、その弱さゆえ、共同体を作り、協力関係のなかに生きていかなくてはならない存在である。
また、わたしたちは上述のように、自身ばかりに関心を向け、他者との比較に終始し勝ちな存在なのだが、
そうではなく他者へ関心を向け、「他者および共同体に貢献する心構え」を持つことこそが、共同体の一員としてわたしたちが自立するために大切となるのである。
それは、「他者を仲間とみなし、そこに『自分の居場所』を感じる状態」とも言え、岸見一郎氏は「他者を愛することによってのみ、人は『自立』を成し得、『共同体感覚』にたどり着く。幸福とは貢献感である」という。
他人との比較、他人への優越を志向するのではなく、個人の人生のタスク(仕事、交友、愛)にしっかりと向き合う(=自・他の課題の分離です)ことが大切だということなのです。
そしてそれが、わたしたちの幸福となるのだと言います。
取り敢えずは、これくらいが骨子でしょうか。
もちろんこれ以外に、アドラー心理学・哲学には、教育論、家族論ほか、様々な展開があり、ここにすべてを書くことは到底できません。
ここでは、わたしが3冊の本「嫌われる勇気」「幸せになる勇気」「なぜ心は病むのか いつも不安なひとの心理」を読んでみて、わたし自身の理解の元、わたし自身がわかりやすいよう、半ば備忘録的にまとめてみました(こうして書いてみて、取り入れられていない部分も多々あり、不足感がありますが・・・)。
改めて驚くのは、
アドラーはフロイトなどとも一緒に仕事をしていたので、20世紀初頭に活躍した人です。
100年くらい経った現代にも通用する考え方を含んでおり、現代にこうしてビジネスシーンなど多くのジャンルに取り入れられていることがすごいな、と思います。
まあ、現代社会とは、昔とは比べようもないほど複雑となった人間関係、時間の流れが速くなっており、「目的は何で、今これからどうするのか?」といった目的志向、解決志向の考え方が重宝される時代なので、アドラーの心理学・哲学が受け入れられやすいだろうなぁ、とは思います。
今回は以上です。
到底書き切れなかったうちで、アドラー、岸見一郎氏の名言、印象的なことばについては、またブログにてご紹介したいと思います。
今回ご紹介した本は次のとおりです。