実は「自然観」を切り口に【哲学全体の流れ】がよ~く分かる、おすすめの哲学入門書です -反哲学入門-

 

反哲学入門」とあるので、ある時期の哲学だけを切り取った解説書だと思われるかもしれませんね。

そんなことはありません。

この本「反哲学入門」は哲学史全体の流れがよ~く分かる本なのです。

 

ここでまず、タイトルにある「反哲学」についてご説明させて頂きます。

反哲学とは?

曰く、プラトン以降哲学とは、「ありとしあらゆるもの(存在するものの全体=自然)がなんであり、どういうあり方をしているのか」ということについての特定の考え方のことです。

このような考え方は、「自分たちが、全体を見渡すことのできる特別な位置に立つ、もしくは関りを持つ存在、すなわち『自身を超自然的存在』だと考えること」でしか生まれてきません。このような位置から「存在するものの全体はなにか」という問いを立てて思考を巡らせてきたのです。この時、自然とは、観察・制作のための材料となってしまいます。

自身が自然の中にすっぽりと包みこまれて生きていると考えた日本人(西洋以外の人)には生まれてこない概念なのです。

そして、このような考え方を批判し、解体しようと考えたのが、ニーチェ以降、ハイデガー、メルロ=ポンティ、デリダなどの「反哲学」的な考え方なのです。

元々、ソクラテス以前の思想家たちは、このような超自然観を持っていたのではなく、自分自身も自然の中の一部であり、存在するものの全体が自然であるという価値観を持っており、そのような自然観を復権させようというのが、反哲学の狙いでもあるのです。

著者は、ニーチェ以前/以後を同じ土俵、枠組みで考えると訳が分からなくなると言います。

実は私、この本にあたるまで、このような切り口を知らなかったので、読んでみて目から鱗でした。ありがたや。

 

本書は、「反哲学入門」というタイトルとは言え、前半でたっぷりと「ソクラテス、プラトン以後の哲学=超自然的原理」の説明にあてられており、むしろ反哲学には後半の2章しかあてられていなかったりするため、オヤッと思うかもしれませんね。まあ、この構成の方が流れがよく分かるので良いと思います。

 

そのような本書を読んで、私が力づけられたことについて書かせて頂きます。

それは。

特にソクラテスからヘーゲルまでの哲学は、自然と一体で自然的思考が強く根付いていた日本人には馴染みにくい、分かりにくい、という一節です。(哲学自体が難しいとか、用語が分かりにくいとか、翻訳の問題など他にもいろいろな要素がありますが、ここでは省略します)

 

実は私、ず~~っと哲学って分かりにくいなあ、と思っていました!

 

現代社会を形づくっているのは、デカルトなどに代表される理性、科学、超自然観なので、自身の視座を広げるため、現代を知るために、何度となく哲学書にトライしてきましたが、何と言うか・・ある種の作法(前提となる知識や枠組み)があるように感じられるし、論点(問いは何か?)が分からないことも多々あって、敷居が高いなぁという思いを持ち続けていました。

このため、日本の方が書かれた哲学の解説書を読むことが多く、本ブログでも解説書のご紹介の方が多いのですよ。何せ、分かりやすく頭に入りやすいので・・・

完全に我田引水、自分に都合の良い解釈だとは思いますけど・・「あ~、哲学って分かりにくくて当たり前なんだ」と思えたり、「これからも遠慮なく日本人によって書かれた哲学解説書を読んでいけばいいんだ」と思うようになりました。

こんな感じで参考となる点が多々ある、面白く興味深い本なので、皆様にもおすすめしたく思います。

「流れ」を俯瞰するのに優れた本です。

 

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