社会に必要な「居場所」について多面的な視点で考える -「居場所の社会学」というおすすめ本-
社会学者の阿部真大氏による本
「居場所の社会学―生きづらさを超えて」を読みました。
私も何度か取り上げさせて頂いた「居場所」というテーマについて
書かれた本です。
さて、著者の阿部氏ですが
学生時代から「居場所」に苦労されてきたようです。
その辺りが「生きづらさを超えて」というサブタイトルにもなっています。
また、そのような背景があるからこそ多面的なものの見方ができた、
とも言えるかもしれません。
阿部氏は、4つの視点で「居場所」について考察されています。
すなわち前半の2つは「職場に居場所をつくる」という視点で、
後半の2つはもっとマクロに「社会的に居場所をつくる」
という視点で書かれています。
学者さん、ということで多様な視点で語られている、と思います。
さて、この中から参考になり印象的な言葉をピックアップしてみましょう。
居場所としての職場は、
それが不安定な1ヶ所となったとき、問題化しやすい。
今までの日本のように、終身雇用制という安定した環境では
会社の中に居ることで安泰の内に一生を過ごすことができました。
けれども現代のような不安定な雇用形態の中では、
「唯一の居場所(絆)が断ち切れると、他の居場所がなくなる」
結果、不安定な環境で生きざるを得なくなる、ということになってしまいます。
この本の中では、会社以外の居場所はない、けれどもその会社では不安定、
そのような会社でも居場所を無くさないため必死に働く=ワーカホリックになる、
という悪循環についても語られています。
現代社会と絡んだ難しい問題だと思います。
が、ここで大切だな、と思うのは
一ヶ所でうまくいかなくても別の場所で承認されること
そのための複数の居場所をつくること
だと思います。
さらに続きます。
上記のような不安定な環境では、不安を覚えることもあると思われます。
そして、このような「不安」を覚えるときは、
「対象が何であるかわからない」ものです。
そんな時、著者はこのように語ります。
自分の力ではこれ以上どうにもならない点である「臨界点」
を知ることで、落ちることへの恐怖心を和らげる。
現実を直視することで得られる安心感は大きい。
漠然と不安に感じるのではなく、実際にどのくらいの状況なのかを知る、
ということです。
私自身も会社を退職した際は、まず一番に自分がどのような状況
なのかを棚卸しし、どのような知識が必要なのか、を考えました。
具体的には、
・自分はどれくらいの支出でやっていけるのか。(支出マネジメント)
・必要最小限の生活レベルはどれくらいなのか。
を検討すると同時に
・ファイナンシャル・プランニング、すなわち
(生臭いですが、)保険・年金・税金などのマネー関係の知識、
公的支援などの社会制度の知識を身につける。
などが必要かな、と思い、実際に棚卸をし、FP技能士の資格を
取得しました。
さて話を戻しましょう。
この本には
著者の経験談に合わせて、学者視点での多面的な考察もあり
参考になるかと思います。