日本発の心理療法である【内観法】は、気づきをもたらす興味深い手法ですね。

 

今回は、日本発の心理療法であり、自己啓発法とも言える【内観法】についてまとめてみたいと思います。

 

【内観法】とは?

「身調べ」という伝統的な宗教的精神修養法(飲まず食わず眠らずの、かなりの苦行・荒行です)を体験した吉本伊信氏が、宗教色を払拭し、改良を加えて確立した手法です。

現在(と言っても、2007年時点)、国内で20箇所の研修所があり、国内各地の学校・病院・少年・刑務所などでも取り入れられていますし、海外でも行われているようですね。

 

その手法は?

基本的には、1週間、研修所等に泊まり込み(集中内観と言います)、屏風などで隔てられた1人の環境の中で、朝から晩まで他者に対する自己の体験を見つめる作業を続けます。

何を見つめ続けるかというと。

母・父・配偶者・子ども・友人など、自身が育ってきた中で重要な人々と自分との関係で、

1.世話になったこと(してもらったこと)

2.して返したこと

3.迷惑をかけたこと

を自身の年代順(小学1年から3年まで、というように、3年間を一区切りとして、現在まで)に具体的に想起していきます。

そして、1時間~1時間30分おきに、面接者と定型的(年代や想起対象が守られているか)で短時間(3~5分、話す内容は取捨選択できます)の面接を行っていきます。

 

このように集中して自己を見つめることにより、内観者の内面に、感謝の心(してもらったこと)、償いの心(して返したこと:往々にして少ない)、謝罪の心(迷惑をかけたこと)などが生まれ、深いレベルで心身の変容が起きるのです。

私のことばで言い換えさせて頂くと、「こんなにも罪深い私を、周りは赦し見守ってくれている」ことを深いレベルで得心するという手法であり、

多くの心理療法の要となっている「価値観・認知の枠組み・世界観」を転換させる、優れた手法だと思います。

他者に言われるのではなく、「本人が気づく」という点が大きなポイントですね。

 

この内観法は、日本人の心の底に根付いている「報恩の心」「感謝の心」を今一度、心より思い起こさせてくれる、という点で、日本人(東洋人と言っても良いかもしれません)の特性に合った手法だと思いますし、

西洋(というよりキリスト教)の懺悔、祈りにも共通点を見出せるように思います。そういった点で西洋の方に受け入れられる素地が十分にあるでしょうね。

 

ただ一方、この内観法ですが、「して返したこと」「迷惑をかけたこと」を振り返るとき、苦痛のあまり自身を責めすぎたり、罪の意識に支配されてしまう可能性がないとは言えません。

なので、「しっかりと見守って支えてもらっている」という愛情体験の発見により、感謝の念や自己肯定に向かう面を育むことも大切でしょうし、内観を行う場が安全・安心の場であることも大切でしょうし、ある程度以上の自我の強さや柔軟性を持っていることも大切でしょうね。

そして何より、当人の意欲が大切だと思います。

それから、内観を一過性のものとはせず、日常的にも、(集中内観ほどまとまった時間ではなくとも)継続的に行うことも、極めて大切でしょうね。

個人的には、日々の中で上記の3つのこと(してもらったこと、して返したこと、迷惑をかけたこと)振り返るだけでも、その時は表面的な意識に訴えかけるものであれ、「継続することで内面化していく」ため、大いに意味があるのではないかと感じました。

 

以上、極めて簡単に、内観法についてまとめてみましたが、ここで内観法の理論や現場での活用事例を知るために良い本を幾冊かご紹介します。

私が読んだのは「内観療法 (心理療法プリマーズ)」です。複数の内観関係者の寄稿から成り立っている本で、大いに参考になりました。

そして、この本の末尾で紹介されている「内観療法入門―日本的自己探求の世界」「内観法入門―安らぎと喜びにみちた生活を求めて」についても、私はまだ読んでいませんが、参考になると思います。

ご興味を持たれた方は、一読されてみられてはいかがでしょうか?

 

 

 

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