お金を使わずに過ごした1年間で、マークが得た貴重な気付き -ぼくはお金を使わずに生きることにした-

 

1年間のカネなし生活を送ったマーク・ボイルは、その過程で様々な気付きを得ることとなりました。本の後半では、マークの様々な気付きや、その後の活動について書かれていますので、その中で、幾つか抜粋してみたいと思います。

 

・マークは、完全な自給自足は不可能であることに気付き、小人数がお互いに協力し合って働くことによって「地域社会のなかでの自給」を実現するやりかたが一番うまくいくと思われたようです。イギリスの進化生物学者のロビン・ダンバーによると、人間が安定した社会関係を維持できる人数は、約150人だそうです。これくらいの数だと、量産によるスケールメリットを受けられる一方で、持続不可能なほどの規模拡大に伴う工業化の恐れも無いそうです。

150人というと、私が町内会をしている単位と同じくらいです。150人規模でスケールメリットを得られるかどうかは微妙なところ(1000人くらい必要ではないでしょうか)だと思いますが、様々なスキルを持った人がいて助けられた、という実感は何度かあります。

 

・マークは、この本の印税などで得たお金(!)を活用し、フリーエコノミー・コミュニティをさらに進展させようとしています。

環境への影響を抑え、お互いが実践技術(スキル)を学び合い、分かち合い、活用し合うコミュニティであり、お金を使わず、メンバーの出入りも自由なコミュニティを構想されているようです。

 

そしてマークは、わざわざ、次のような文を抜粋されています。

・人はお金があればあるほど幸せになると思い込んでいる。「収入が増えれば増えるほど、ますますお金が欲しくなる」という事実を忘れているから。どんなに収入が増えても満足することなどない。それなのに、家庭生活や健康を犠牲にしてまでお金を稼ごうとしている。

南カリフォルニア大学の経済学者リチャード・イースタリンは、「消費主義のルームランナー」という秀逸・的確な表現で、このような印象的な指摘をされているのです。

 

さて、マークがこの試みを行ったのは29歳の時です。

若さゆえ、極端だし、青臭い試みだと一蹴することもできると思います。また、マークが構想するコミュニティの試みも様々な困難があるかも知れません(今まで、同等のコミュニティ建設は何度も行われていますが、うまくいっていない事例が結構あるようです)。

ただ、マーク自身は、完全に社会に背を向け隠遁生活をするのではなく、適度に現代生活との距離を保ち、バランスを取っているように見えます。この体験、および後に続くフリーエコノミー・コミュニティから得た気付きから、バランスの取れた着地点を見出すのではないかと思います。

 

 

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