世界五大陸に最高の授業を届けていこう、という青年のお話です -「最高の授業」を世界の果てまで届けよう-

この話は、世界版「ドラゴン桜」プロジェクトと言えるでしょうか。

税所篤快(さいしょあつよし)という青年が、世界中の教育が必要とされている地域に、「最高の授業」を、 世界の果てまで届けようというお話です。

 

このプロジェクトの最初の対象国はバングラデッシュです。

実はバングラデッシュは超学歴社会で、受験予備校がいくつもあるといいます。ただ、都市と地方での教育格差が大きく、高校生の中には予備校に通うお金がなくて大学に行くことをあきらめてしまう場合が少なくないのです。

そこで、バングラデッシュの予備校でトップレベルの人気を誇る先生たちの授業をビデオカメラに撮影して、DVDに焼き、地方の高校生に届ける、というアイデアが生まれたわけです。この試みは、初年度から生徒を大学合格に導くことができ、成果を上げることができました。

途中、いろいろな障害、紆余曲折を乗り越えて、この本が執筆された2013年6月時点では、バグラデッシュはじめ、ガザ地区、ルワンダなどで活動を展開されています。また、当初のDVD配布に止まらず、テレビ会議システムを利用した遠隔授業にまで発展しています。

 

税所さんのこれまでは、良い人間関係、メンター(折りに触れてアドバイスをして導いてくれるような存在)に恵まれていることが大きな特徴だと思います。

そして何といっても、そのための行動力が凄いと思います。

具体的にはまず、高校生当時、米倉誠一郎氏との出会いから始まります。まずは講演後の懇親会で話をし、その後、米倉氏の中国研修旅行に応募し合格、その後のツアー仲間との同窓会でさらに話を深め、親しくなられたようですね。

恐らく税所さんにとって、この最初の成功体験(人の懐に飛び込む。自身のパッションをぶつけることの大切さを知る)が、その後の素晴らしい行動力に繋がっていくのかな、と思います。

 

その後、政治家のもとでかばん持ち、ケニアへの学校支援ボランティア、「グラミン銀行を知っていますか」という本で知った秋田大学の坪井ひろみ先生の研究室に突撃(本を読み、すぐに先生の研究室に電話を入れ、その翌日に訪問!)します。

そしてすぐにバングラデッシュに飛んだのですが、真正面からいきなり行ったのではグラミン銀行と十分な縁を持つことが難しいことが分かると、さらに調査を進めます。結果、九州大学とグラミン銀行が共同研究を行っていることが分かり、そちらへ訪問することで、グラミン・コミュニケーションズの研究ラボで働くこととなり、あのムハマド・ユヌス氏とも会うことになるのです。

さらには、税所氏のこのアイデアは、ご自身も学んでいた、日本のT予備校のDVD授業にありますが、その予備校の先生、講演会で知った藤原和博氏など、次々と重要な知己を得ていかれます。

 

素晴らしい行動力だと思いませんか?

もちろん、税所さんはお金持ちなのかな、とか、これはたまたまうまくいった事例に過ぎず多くの場合は失敗しているのではないか、などの突っ込みどころはあると思います。

が、恐らく、世界に冠たるエレクトロニクスメーカーの創業者、戦後高度成長期の日本人なども同様のバイタリティーと行動力を持って世界を開拓してきたのではないかと思います。

 

ちょっと辛口な言い方になりますが、アイデア自体は日本のT予備校のシステムの横展開に過ぎない、という言い方ができるかもしれません。

が、そうではなく、これを実現する行動力、突破力、すなわち人材力こそが、社会起業、一般企業を起こす上で大きな要素を占めていることが良くわかります。

税所さんの行動を追体験することで、人とつながっていくためにはどのような方法があるのか、という点でも参考になりますし、中学・高校などの時期に、自身の視野を広げてくれる機会を得ることが大切だと、改めて認識できました、

 

 

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