「持続可能な仕組み作り」の大切さ -税所さんの本を読んで考えた「社会起業での課題」-
今回は、税所さんの本「「最高の授業」を、 世界の果てまで届けよう」の続きのお話をさせて頂きます。
実は、この本の冒頭や中程には、やや唐突に、W社との事業化計画の失敗の話がでてきます。また、この本の最後には、税所さんと米倉誠一郎さん、田村耕太郎さんというお二人のメンターとの対話が収められています。
本の大部分は、税所氏が世界中を飛び回り事業を展開する様であることから、この部分については少々唐突感があるのですが、それは、ご本人がある課題を認識されているからだろうと思います。
では、その課題とは?
それは、持続的に収益を上げられるビジネスモデルの確立です。端的に言うと、継続的にお金を調達でき、事業を運営し、社員に給料を払い続けられる仕組み作りです。
よく、社会支援事業においてお金の話をするのは筋違いで汚いことだ、との話が出てきます。
が、社会起業において、持続的に機能していくことこそ、社会に大きなインパクトを与え、社会に貢献していくことになるのではないでしょうか。あくまで、一般企業のように成長を志向するのではなく「持続する」ということですが、それでも組織としての仕組みが成立していることは大切です。
ムハマド・ユヌス氏は言います。
社会に存在意義がある事業は必ず利益を生み出す。私がやっているグラミン銀行は本当に儲かっている。だから継続出来てみんなが認めて参加している。(中略)ふつうの会社だって儲かっていれば雇用を生むし、税金を納めて利益を出しで事業を継続できる。
ユヌス氏は、何と、チャリティは嫌いだ、とまで言われています。
個人的には、ちょっと資本主義的精神に寄りすぎた意見のように思わなくもないですが・・
それでも、組織を作る、資金を調達する、ある程度の収益を上げる、給料を払い続ける、など継続できる仕組み作りが大切だと思います。
※当然、仕組み作りを追究するのではなく、純粋にボランティア的に社会貢献するという道はあります。それは、本書のような社会起業とは別の話です。
このような仕組み作りは、一般企業相手に寄付を募ったり、取引をする場合や、専従者を設置する場合に考えていく必要があります。
仕組み作りに関しては、ご本人がその知識・スキルを持っていることが理想ですが、そうでないことも多々ありますし、何よりご本人に時間の余裕が無いことが多々あります。
そのような場合、他の方の力を借りることが大切だろうと思います。
具体的には、経営の知識を持った人、できれば会社での経験を持った人とペアを組んで取り組むこと、もしくは、プロボノのような専門知識・技能・能力を持つ人と連携するなどの手段もあろうかと思います。
少し話は脱線しますが、成功した起業家の年齢を調べると、50歳代で起業した人の方が、20歳代の起業家より2倍以上多いという話もあります。まあ、人脈や経験も多いため、冒険心や突破力では劣るかもしれませんが、現実と程よくマッチしたビジネスモデルを描きやすい、ということでしょうね。
巷では、中年で起業された方の物語、事例紹介などの本が相対的に少なめのように思います。(定年後起業のお話は結構ありますが)そのような方々の体験記がもっともっと出てくると良いですね。
税所さんの本を読んで、いろいろと考えさせられましたね。
ちなみに、税所さん創業のe-Educationのホームページはこちらです。
各地で活躍するメンバー、メンターの方、スポンサー団体など、着々と活動の輪が広がっている様子が伺えますね。