哲学史を学ぶ意味を知り、哲学史を概観する -貫成人教授の「哲学マップ」(おすすめ本)-

本日も、哲学のお話の続きです。

先日、飲茶さんの「14歳からの哲学入門」をご紹介させて頂きました。

飲茶さんの本は西洋哲学史を概観するというものでしたが、今回ご紹介する本も、他の方による哲学史を概観する本です。

貫成人教授の「哲学マップ」です。

私は、本書の著者である貫成人教授の本を結構読んでいます。

というのが、この方の本は、突然難解な中身に入ることなく、一般の方が最初に掴んでおいた方が良い概念、枠組みを提示して下さるので分かりやすいのです。

例えば本書の冒頭では、いきなり哲学史に入るのではなく、哲学的発想の特色、哲学的な問いとは、哲学史を学ぶことの意味などが簡潔に書かれています。

まさに「哲学」について俯瞰できると思います。

具体的には。

【哲学的思想の特色・目的】

・生活が営まれる現実世界を、一歩外から眺める。

・特定の個人に限定されることなく、「すべて」に当てはまる何かを見出す。

【哲学的な問い:時代とともに変遷しています】

・○○とは何か? (家族、仕事、死などのテーマ)

・わたしとは誰か、何を知りうるのか?

・なぜ、このようなことを問うのか、

 答えが手に入らないと分かったとき、どう気持ちを切り替えるのか?

【哲学史を学ぶ意味】

・哲学史とは「問いと答え」の収蔵庫である。

・視野を広げ、自分を相対化する。

・既に誰かが犯したのと同じ過ちを繰り返さなくて済む。

・表面的だった理解を深めることができる、

 金科玉条とされている事柄の起源や根拠が薄弱だったことを知る。

いかがでしょう。

哲学に興味を覚えませんか?

さて、本書の内容説明に移ります。

この本では、古代ギリシャから始まり、中世、近世、現代までの哲学史を俯瞰します。少しだけ東洋思想もありますね。

飲茶さんの本に比べ、やや教科書寄りというか、やや硬派な記述ですね。

紙面の限り、多くの哲人が取り上げられています。

哲人によっては、半ページくらいでさらりと書かれていますね。

とは言え、全体を俯瞰するという点で情報量は十分にあると思います。

さて、多くの情報の中から印象に残った点を取り上げましょう。

それは、デカルトの主観・客観図式についてです。

・主観・客観図式により、人間は万物を客観(対象)とするようになった。

・人間中心主義から、科学技術を道具とした自然支配、という思想を生んだ。

・自我中心主義から、自由主義、個人主義、民主主義という政治思想を生み、

 これらが合体して生まれたのが、近代国家である。

デカルトという17世紀の思想家による思想が発展し、現代国家の価値観の基本となっている、という点に少し不思議な感じがしませんか。

もちろん「中世からの転換」という当時の潮流を踏まえると、デカルト以外からこのような思想が生まれた可能性が高いとは思いますが、一時代の、一思想家による思想が、現代まで大きく根底が変わることなく続いているという・・・

興味深いですね。

他の貫成人教授の本については、また今度、紹介しようと思います。

哲学に関してはシリーズ化しています。

よろしければご覧ください。

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