哲学の入門書であると共に、科学の限界についても言及する -「哲学のすすめ」という本-
さて本日は、哲学の社会的意義、現実との兼ね合いなどとともに、私も関心を持っている「科学の限界」についても語る「哲学のすすめ」という本について紹介させて頂きます。
この本は、何と1966年に第1刷出版なので、50年近く前、かなり古典的な本です。
私が手に入れたのは、第80刷なので、いかに連綿と読み継がれてきたのかということですね。
本文冒頭で、当時の哲学への誤解が語られていることが、印象的です。
曰く、
・哲学というものは交霊術と関係あるのですか。
・哲学をやっていると、何年ぐらい先のことまで分かるようになりますか。
いやはや凄いですね。
さすがに今では、このような誤解は無いでしょうね。
この後に続く誤解は、現代でも通じるでしょうか・・
・哲学が無くても生きていけますよ。
まあ、このような、あまり正確に理解されていない「哲学」とはどのようなものか、ということをこの本では語られています。
前述のとおり、
私自身、「科学万能という現代の価値観(宗教?)への疑問」があるため、「科学の限界はなにか」「哲学と科学は対立するか」という章を大変興味深く読みました。
曰く、
・哲学は、価値判断の原理を与えるもの=いかにあるべきか。
を語り、
・科学は、事実についての知識である=いかにあるか。
ということで、哲学と科学は相補うもの、ということです。
この点、池田晶子さんは、
・哲学は、「なぜ(そのように存在するのか)?」と問うもの、
・科学とは、「どのように(存在するか)?」を説明するだけ、
と言われていますね。
哲学と科学で1セットと言うのか、哲学の無い科学の危険性について、よく分かります。
さらには。
・形而上学的世界観が崩れることで、
人間以上の絶対的なものの存在を考えることが、
「根拠のないもの」だということになった。
という文章も印象に残りました。
まあ、このことにより科学的知識が「絶対」という立場に取って代わった、とも言うことができるのでしょうかね。
現代社会においては、科学の進歩により「哲学なき科学」という問題も散見されるようになりました。
過去、科学のみならず、心理学、経済学などが哲学から独立してきました。
そして冒頭に書かせて頂いた通り、現代では、残された「哲学」に関する一般への浸透度が低く、誤解も受けています。
哲学書の難解な文章を時間をかけて学ぶのではなくて、まず、(基本を学ぶという意味で)哲学を俯瞰した後、「当たり前と思われていることを相対化し、自分自身で考える」ことが大切なのではないかと思います。
哲学に関してはシリーズ化しています。
よろしければご覧ください。
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