代表的な経典を歴史的に辿ることで、【大乗仏教】の多様な教えと「原始仏教」との違いを分かりやすく概説する!-100分de名著の「大乗仏教」-

 

釈迦(ゴータマ・ブッダ)のオリジナルな教え、いわゆる「原始仏教」について、経典、解説書などを読んできました。

一方、私たち日本人は、中国経由で伝来した「大乗仏教」の教えに馴染んできましたし、実際多くの家庭では、大乗仏教の何らかの宗派の檀家だったりします。

 

私自身、大乗仏教には詳しくないのですが・・・それでも各宗派の教えを概観してみると、上記原始仏教とも違っていますし、大乗仏教の中でさえも大きく教えが異なっていることが、不思議でもあるし、興味深く思っていました。

大乗仏教の教え(経典)って、多様で膨大な量にのぼるため、なかなか全容をつかめないなぁと感じていたのですが・・・

テレビでおなじみの、100分de名著シリーズの「別冊NHK100分de名著 集中講義 大乗仏教 こうしてブッダの教えは変容した」という、分かりやすい概説書が出版されているため、手に取ってみました。

著者である佐々木閑氏は原始仏教の研究者で、サンガ、律などを深く研究されている方です。

このため、本書での見方は、どちらかと言うと原始仏教の立場から見た見解かな、とは思いますが・・・日本国内には、大乗仏教の立場で論じられた書籍の方が多いため、比較的珍しい立場での概説書ではないでしょうか。

また、立場ゆえのバイアスもそれほど多くないように感じました。それほど大乗仏教に批判的ではない、ということです。

 

本書は、大乗仏教の代表的経典を取り上げ、その代表的な考え方を、青年と教授の対話という形式で書かれています(元々、著者の大学に通っていた社会人学生との対話から生まれた本です)。

※ちなみに、代表的な経典とは、般若経、法華経、浄土教、華厳経です。本書ではまた、密教についても触れられています。

 

さて、原始仏教(本書では、「釈迦の仏教」と呼んでいます)と大乗仏教の大きな違いとは?

 

釈迦の仏教では。

基本的に出家修行を重要視しています。修行に励み、苦しみの源である煩悩を消し去ることで、輪廻から脱し涅槃に至ることが目標とされました。人生は「苦」であることが基本となっていますから。また、自力で道を切り開くという考え方ですね。

 

一方、大乗仏教では。

私たちを助けてくれる超越者(ブッダ)や力が存在し、そのような「外部の力」を救いの拠り所と考えるという点が大きな特徴です。在家信者でも悟りの道を歩むことが可能で、そのためには仏様を敬い、お経をとなえながら、日常生活の中で人としての善い行いを続けることが大切とされます。

 

このように、自力/外部の力、出家修行/在家という点一つとっても、大きな大きな違いがある二つの教えが、いかに整合性を取りながら同じ仏教として存在し得るのか、なぜこれほどの多様性を生み出してきたのか、など一部、著者の独自見解を交えながらも、分かりやすく書かれていると思います。

 

私自身は、ここ最近、釈迦の仏教(原始仏教)を中心として、いろいろと書籍にあたってきましたが、日本人の中に深く浸透し、多くの人の支えとなってきた大乗仏教についても、もっと触れてみたいと思います。

そのような、大乗仏教の基本的な教え、多様性、変遷について、歴史観を踏まえながら概説してくれる本書は、入門編、きっかけとして良いのではないかと思います。

ご興味を持たれた方は、ぜひ一読されてみてはいかがでしょうか。

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