貧困の実態を知ってもらいたい。 -「反貧困」(湯浅誠氏)2-
さて、昨日の続きです。
湯浅さんが「反貧困」を執筆された動機は次の通りです。
姿が見えない、実態が見えない、そして問題が見えない。そのことが自己責任論
を許し、
を誘発する、という悪循環を生んでいる。貧困問題解決への第一歩は、貧困の姿・
実態・
本書の執筆動機もまた、
湯浅氏は、貧困とは自己責任(本人が意図的に選んだもの)によるものでなく、
「もっと複雑なものである」ということを何回も言及しています。さまざまな貧困状
態を理解すると、
ています。(p.82)
すなわち、自己責任論は「他の選択肢を等しく選べたはず、
つ議論」であり、貧困とは「他の選択肢を等しくは選べない状態で総合的に溜め
を奪われた/失った状態である」ということです。これは、「五重の排除」という言葉
で表されていたと思います。
さて、以上が貧困の原因、社会の状況ですが、では、どうしたらよいのでしょうか。
湯浅氏は、2つの活動をしています(2008年時点)。
一つ目が、「もやい」での活動です。(p.126から)
もやいでは、「住所不定状態にある人たちに対するアパート入居時の連帯保証人
提
生活保護申請同行や、当事者同士の相互交流、
ています。
そこでは、「生活保護同行により、あっさりと生活保護を受けられる」という事例や
「居場所作りは、再チャレンジのための精神的、
重要」という話があり、さらには、「95パーセントの方が連帯保証人に金銭的な
負担をかけずにアパー
最後の話は、アマルティア・センのマイクロファイナンスの話にも通じると思います。
湯浅氏は、この事実により、自己責任論は破綻しており、社会的、構造的要因が
あるかもしれない、とあくまで冷静な目で語られています。
そして、湯浅氏の二つ目の活動の柱は、
「反貧困たすけあいネットワーク」です。
組合形式の相互扶助の仕組みであり、「休業たすけあい金という給付金」と
「生活たすけあい金という無利子貸付金」があります。(p.159)
この「組合形式の相互扶助の仕組み」は、福祉の現場に関わらず、社会保障、
経営などにも生かしていける素晴らしい考え方ではないでしょうか。
そして最終章にも印象的な言葉があります。
効率的なものが勝利する社会は、
は、
資本力を持つ者が有利である、そのような者が格差の上に立っている、
と言い換えることも可能なのでしょうか。言い過ぎかもしれませんが・・
ピケティの「21世紀の資本」の主題:格差につながる内容だと思います。
やはり、本気で活動している人たちの見識は、どこかでつながるのでしょうね。