心理学好きの方に読んで欲しい本! 河合隼雄氏の【中年クライシス】

本書中年クライシスは、

オードリーの若林正恭さんがご自身の本のなかで、その名を取り上げられていたので、興味を持ち読んでみました。

若い頃から自他共に認める自意識過剰であったという若林さんが、30歳代となり、(多分、知り合いに薦められて)紐解いてみたのが、この河合隼雄さん中年クライシスだそうです。

本書の著者である河合隼雄さんは、日本にユング心理学を紹介された方で、著名な方なのでご存知の方も多いかと思います。

本書中年クライシスは、そんな河合さんが、夏目漱石の「門」「道草」、阿部公房の「砂の女」など、12冊の文学作品を読んでみて、タイトル通り「中年のクライシス」について焦点をあてて論じた本です。

 

では、タイトルの「中年クライシス」とは?

 

ずいぶんと物騒な名称ではありますね。

中年期を迎え、ある人は会社員として、ある人は家庭人として社会的自我を確立した後、

ふと「自分は本来何なのか」とか「自分はどこから来てどこへ行くのか」とか「死を意識し始め、どう生きるか」など実存的な課題に直面することが、ある意味危機として捉えられ、このような名称で呼ばれています。

中年期とは、現代社会だと40歳代くらいからでしょうか。

もっとも、生き方が多様化、かつ忙しくなっている現代社会では、上記の社会的自我を確立していない人も多々いるでしょうし、

あまりに忙しかったり、熱心に何かに取り組むなか、そのようなことを意識しない(あるいは意識的に遠ざけている)場合もあるように思えますので、一概に40歳代からとも言い切れないでしょうね。

 

さて、本書では、各作品における夫婦、親子などの家族、親戚、友人、恋人など、様々な人間関係が取り上げられています。

そして、各作品を取り上げながら、河合氏の豊富なカウンセリング経験や知見を活かし、それら人間模様・心理状態について説明されたり、感想を述べられています。

 

この中には、私の人生では到底体験し得ないであろう人生のドラマがあり、読むことを通じて豊かな経験をしたように思えます(まあ、実体験にはかなわないとは思いますけど)。

 

これらの中で「味わい深いなぁ」と感じた文章をピックアップしてみます。

人間も自然の産物である。誰しもそのなかにはワイルドなものをもっている。(中略)人間が下手に文明化すると、ワイルドなものを内にもっていることを忘れる。

ワイルドなものとは、別に暴力的なもの、ということではありません。

すべてをあまりに理性的、合理的に受け止めるのではなく、自身のなかの情感的な面を認め、「地に足を付けた現実感覚や現実感を持ち、それら現実を情感を持って味わうこと」の大切さを言っているのではないかな、と思います。

 

そして、

「すっきりとした(問題の)解決」というのは誰しも望むものであるが、中年の「解決」はそんなものではなく、そこに新しい課題が上乗せされ、それに向かっていかなくては、という形の「解決」となることが多いのである。

何のかのと言っておれない、ともかくこれに立ち向かっていかなくてはと頑張っているうちに、古いことは解消してしまう。

現実世界で生活することは、常に「現在進行形」で、何だかんだと色々なことが起こります。

「これが片付いたら、すべてから解放される!」などというのは、恐らく幻想です。

「目的地」を考えるのではなく、「過程」「プロセス」「流れ」こそが生きていることかな、と思います。

 

さらには、

(人生での)「思いがけないこと」は、まったく偶然に人を不幸やわずらわしさの中に引き込んでゆくように思える。

しかしよく見ると、それは当人を実に巧みに未解決の問題との対決へと導くところがあり、それは必然的にさえ感じられるものである。

課題の多い中年に「思いがけないこと」が案外よく起こるのは、このせいかもしれない。

同意します。

とくに中年期に限らず、「何となく自分で蓋をしてしまっていた都合の宜しくないこと」って、巡り巡って自分が直面せざるを得なくなる場合があるように思います。

私自身、「何で私にこんなことが?」と思ったことが、よ~く考えると自分に遠因があった、と感じたことがありました。

 

以上、幾つか抜粋して書かせて頂きましたが、たしかに本書中年クライシスは、興味深い内容でした。

と同時に、文学作品が心を豊かににする、といったことも実感できたように思います。

まあ、私はあまり文学作品を読んでいないのですけどね。

気になった本を改めて読んでみたいです。

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