名著でも難解な専門書を読むために「解説書」を併用することは有効です!【社会学の名著30】
人間の織り成す社会について分析・研究する「社会学」が好きで、興味を持って何冊かの本を読んできました。
そのなかには、いわゆる名著・古典と呼ばれるものもありましたが・・・
難解過ぎて挫折しかけている(いつかもう1度読むつもりです!)本も多々あります。
その辺りの事情は、今回ご紹介する本「社会学の名著30」の冒頭で著者の竹内洋氏が端的に語られています。
曰く、
古典や名著を読みなさい、とよくいわれる。そのとおりである。
しかし、初学者がいきなり古典や名著を読むと、途中で挫折してしまうことがすくなくない。
直訳調の文体やいりくんだ論調の難しさで圧倒されることで挫折するだけではない。
時代ははるか昔、書かれたのも遠い異国のことが多いから、背景についての知識がなければ、文中に出てくる人名や出来事のひとつひとつにひっかかるからである。
いきなり古典・名著では挫折の危険がいっぱいで、そのためにそれらが嫌いになってしまうかもしれない、とも書かれています。
もちろん、ですが、古典・名著を読むのは大切です。
が、私の経験上、哲学書を読むときもそうでしたが、著作の背景となっていること、前提などに多くの不明点があり、何に焦点が当てられているのかさえ分からないことが何度もありました。
忙しい現代人が、わけも分からず、何週間も1冊の本と格闘するのは、長い目で見れば役立つこともあろうかと思いますが、多岐に渡る社会学を俯瞰するには、あまりに時間がかかりすぎるようにも思えます。
私は、新しいジャンルを学ぶときは、
①何冊かの入門書を読む
②興味を持った本を読む
③その本の解説書を読む
(以下、②③を繰り返す)
といった方法が良いのではないかな、と思っています(時折、②と③が逆転します)。
さて、前置きが長くなりましたが・・・
本書のような名著を紹介する本の場合、各章の標題と概略(私的な感想含む)を書き留めるのが分かりやすいのではないかと思いますので、書き示してみたいと思います。
それでは、始めます。
Ⅰ 社会学は面白い・・・?
社会学者による入門書「社会学への招待」やデュルケムの古典的名著「自殺論」などが簡潔に解説されています。まずはここからピックアップして読んでみると良いかもしれません。
Ⅱ 近代への道筋
本書では、マルクスらの「共産党宣言」やウェーバーの「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」など、政治学や宗教学でも取り上げられるような名著がピックアップされています。
Ⅲ 大衆社会・消費社会・メディア社会
その昔、日本でも大いに話題となったマクルーハン著「メディア論」などの名著が紹介されています。
ここで取り上げられているのは、1930~70年くらいに刊行された本で、20世紀末に訪れる社会についての鋭い洞察が参考になります。
これらを土台に、21世紀の現代社会を分析すると良いと思います。
Ⅳ イデオロギー・文化・社会意識
ここでは、一冊の本:ブルデューの『ディスタンクシオン』を紹介します。
日本では「格差社会」が問題となっていますが、ブルデューが語る「文化資本」の考え方は、なるほどと参考になりました。
いわゆる「毛並みの良い人」とは、その家庭で代々受け継がれてきた「文化資本」によって作られてきた、とも言えるのです。
政治、芸能など様々な世界で世襲が増えているのも、この文化資本が継承されていることが大きいのかも知れません。
Ⅴ 行為と意味
日常で行う、いわゆる当たり前の行動の意味を探るエスノメソドロジーなどの著書が紹介されています。
私も学生時代、この辺りの手法を使っていたことがあるのですが、ここに紹介されている書を読むことで、その時は十分に理解し切れていなかったことを相対化でき、参考になりました。
Ⅵ 現代社会との格闘
個人的には、一番関心のある分野です。
パットナムの「孤独なボウリング」、イリイチの「脱学校の社会」など、あまりに鋭い社会分析には、感銘を覚えます。
Ⅶ 学問の社会学
「社会学」という学問自体を学問する、というジャンルかと思います。
本書「社会学の名著30」では、これら7ジャンルの名著が簡潔で分かりやすい解説のもと、紹介されています。
私も、本書の中で紹介されている何冊かは、原書にあたってみています。
たしかに、ある程度、背景的な知識を持って原著にあたると、見通しがよくなる、と感じます。
いかがでしょうか?
社会学にご興味をお持ちの方は、ぜひ手に取ってご一読ください!