改めて「自伝書」を読むことで、時代の空気にしっかりと触れることができると実感しました。-福沢諭吉【福翁自伝】-

 

藤原正彦氏の名著講義で取り上げられていたことから、本書を紐解いてみました。

本書福翁自伝の存在は、以前より知っていましたし、もしかしたら過去読もうとしたことがあったかも知れませんが・・・今回こうして正式(?)に読んでみた次第です。

本書執筆者である福沢諭吉は、お札の肖像になっており、慶應義塾を作った、日本の歴史に必ず登場してくるような著名な人物です(執筆者と書きましたが、正確には、諭吉が口述したものを速記者が記録し、それを諭吉が加筆・修正して出来上がりました)。

この度読んでみて、知っているようで案外、というか全くもって諭吉の生きた時代や、諭吉の功績などを知らないなぁと感じました。

以下、諭吉の生涯について、ごく簡単にまとめてみます。

諭吉は大阪生まれ。

豊前中津(現在の大分県)奥平藩の下級士族である福沢百助と於順との間に生まれました。父親が大阪にある中津藩の倉屋敷に勤番していた関係で、大阪生まれなのです。

3歳のとき父親が亡くなり、遺された福沢一家は中津に移ります。が、使う言葉や着物など様々な違いがあり、諭吉は中津には馴染めなかったようです。

そのせいか、長崎遊学時代を経て、22歳大阪に出て緒方塾に入ります。

当時の諭吉は、枕を所有していない、すなわち寝床で眠らないため、枕が必要ないくらい勉学にいそしんでいたようですが、

一方でエネルギーに溢れていたのでしょうね、今だとイジメと言われそうなイタズラもしていたようです。また、当時はオランダ語の書を読んでいたようですね。

そして25歳の諭吉は江戸へ出ますが、その時すでにオランダ語は時代遅れだと知り、勉学の対象を英書に切り替えていきます。

一見、一からの出直しのようですが、同じ西欧の言語ということで、英語への移行は案外にスムーズに行けたようです。

それから。

当時は不安定な時代だったのでしょう。暗殺の危険に怯えながらも、英語力を生かし、アメリカに2度、ヨーロッパに1度渡航しています。

現地の人が自慢げに見せてくれたものの幾つかは、既に書物を通して知っていた、との回想を面白く思いました。

別ブログで書かせて頂いた武家の女性によると、とにかく「下級武士は豊かでなかった」とのことですが・・・

激動の時代ゆえに、だと思いますが、下級武士でもこのような外国渡航(しかも、ヨーロッパへは幕府から400両受取り、幕府の派遣という扱いで渡航しています)のチャンスをつかめたのですね。

恐らく、英書が読めて外国事情に明るいといった点も後押しとなったのでしょう、外国訪問で大いに目を開かされたようです。

そんな諭吉ですが、江戸の何箇所かを転々としながらも、慶應4年に、それまでも開いていた塾名を、年号から取って「慶應義塾」と名付けました。当時はもっぱら洋学(英書)を教える、珍しい塾だったようです。

 

さて、ご存知のように、江戸末期から明治初期にかけては、坂本龍馬、西郷隆盛、吉田松陰ほか、開国・維新に向けて身をなげうった人々が、物語として語り継がれたり、本の題材・TVドラマとして扱われ勝ちですし、知名度が高いようです。

まあ、このような人々は改革の士であり、激動の人生を送っていることから、ストーリーとして語りやすいという面があるでしょうけど。。。

一方で諭吉が、そんな政治の世界に何なぜ入っていかなかったのかなぁ、との疑問がわこうかと思います。

諭吉曰く、「幕府、勤王の両思想に共感できない」と語っており、それが一つの要因だったのは確かだと思います。

加えて、諭吉は「学問好き」で、「政治への関心が薄かった」こと、欧米を見聞することで「欧米に追いつくことを重視していた」こと、「そのためには教育が大切だと考えていた」ことなども要因に挙げられようかと思います。

そして、私自身密かに思ったのが・・・

諭吉はかつて外科手術に立ち会ったとき、その様子を見て気が遠くなったことがあるように、「気が優しいところ」があったり、暗殺を恐れて旅をするときは偽名を使うなど、かなり「慎重な性格であったこと」など、本人の気質的な面も大いに関係しているように感じました。

 

タイトルに書かせて頂いたような「時代の空気」については、このような短い文章であるブログでは十分に書き切れませんが・・・ 本書福翁自伝の中にある数多くのエピソードを読むと、ひしひしとそれが感じられるように思います。

江戸時代末期から明治初期にかけては、新しい時代が押し寄せてきており、ワクワクすると同時に、今までの大切なものが失われるという危機感や不安が交錯した激動の時代であり、人々は質素だけど生き生きと生きていた時代だな、という印象を持ちました。

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