不安・葛藤や逃避欲求をそのまま(あるがまま)にしておいて、現実の目的を果たしていく、【森田療法】の考え方は参考になりますよ。

森田療法については、ほっしーさんの本のあとがきで、和田秀樹医師が「注目している」と書かれていました。

森田療法は 1921年頃、森田正馬氏によって創始されたといいますから、約100年前に誕生しています。当初は外国で認められ、やがて日本でも関心を持たれるようになったそうです。

今回は、この森田療法について分かりやすく解説された、岩井寛氏の「森田療法」のご紹介をします。おすすめの書です!

著者の岩井寛氏は精神医学者です。

本書は、岩井氏が亡くなられる前に口述筆記され、亡くなられた後に出版されました。何としても本書を残したいとの気概が伝わってくるような、渾身の著作ではないでしょうか。

森田氏とは、発達論などにおいて考えの違い(というより、岩井氏が森田氏の発達論の不足を補うような感じです。)があるようです。

が、岩井氏の臨床での経験も加えながら、森田療法についてきわめて分かりやすく書かれており、森田療法の入門書としておすすめです。

 

さて、森田療法とは?

 

不安・葛藤や、逃避したいとの欲求は「そのまま」「あるがまま」にしておいて、今の自分自身の現実的な目的を実践していこう、というものです。

ここには、「心の不安を異物として除去しよう」との発想はありません。

どんな人でも生きていれば不安・葛藤を抱くのは当たり前、すなわち不安・葛藤は人間の一面とも言えるもので、分析し除去することなどはせず、「あるがまま」の姿で認めていこう、との考え方があります。

 

ここでちょっと具体例を示しましょう。

おそらく多くの方が、

人前で発表を行う時など、堂々と振舞うべきだと考えるあまり、胸の鼓動が気になったり、ノドがカラカラになったりします。そして、それらを抑えようとすればするほど、そちらに意識がいき、発表どころではない、逃げ出したいとの経験をされているのではないでしょうか。

これは、森田療法では「精神交互作用」と言われます。

ある意味、人前で発表する際、緊張して心身に反応が出るのは当たり前(あの明石家さんまさんでさえ、お笑いをやるときは緊張が大切、と言われています)です。

が、それを拒否しようとすればするほど、そのことが新たな刺激となり、さらに緊張が増し、ついにはそのことしか考えられなくなるのです。

ここでは、人前での発表の場面を紹介しましたが、対人恐怖など森田氏が神経質(症)と呼んだ症状は、上記のような精神交互作用が何度も強く働いた結果、症状として固着したものだと考えられています。

※森田療法では、素質的なものであるヒポコンドリー性基調(気に病み、取越し苦労する心情)や、前社会化期(幼少期、少年期)の家族・他人との教条主義的(かくあるべし、などの考え方)な関わり方などにより、神経質(症)発祥の素地ができると考えます。そこへ、上述の精神交互作用のメカニズムが働くのです。

 

そして、その症状への対処法については?

 

まずは、上述のような精神相互作用のメカニズムについて知ること。

そして、とらわれ、はからいなどが無いか、悪循環に振り回されていないか、など自分自身を知ること。

さらに、気になることから注意を逸らそうと頑張るのではなく、不安・葛藤・逃避などの思いをそのままにしておき、自身の目的に向けて行為していく(「目的本位」と言います)ことが大切なのです。

※実践の前に、背景となる「ストレスとなる環境」を整理・調整することは大切です。例えば、職場における環境などは充分に調整しておくことです。

 

ここでちょっと具体的に、私の例を挙げます。

私の場合、何か初めてのことを行うのが億劫で、ちょっと体調が悪かったり、生活のリズムが変だな、と思う日があると、「今日はリズムが良くないから、またの日に行なおう」などと回避する傾向がありました。何かと理由を付けて先延ばしにするのです。

が。

そんなペースでは物事が全然進みません。「新しいことをしたくない」ことが根底にあるため、何かと理由を付けて物事を自分の都合のよいように修正していることに気づいたので、思い切って、少々リズムが悪いなぁと思う時でも、とにかくやってみる!ようにしています。

ただ、一度決心しても、しばらくすると決意が揺らぐことがあるため、この考え方を定期的に見返し、「とにかくやってみる」方向へ自身を修正することもよくあります。

以上が、「森田療法」の概略です。

 

最後に大切な点です。

森田療法の特徴として「あるがまま」とありますが、このことばを、勝手に逃避的な欲望の実現に「結びつけない」ことです。都合よく「やらない」ことが「ありのまま」なのではありません。自身の不安がブロックをかけているに過ぎないことも多いのです。

※「虫の知らせ」のような直感に従って行動するとうまくいく例があるのも確かです。が、私の場合は、直感よりむしろ、何かの行動を止めたい場合に自身にブロックをかけていることの方が多いので、行動することを優先した方がよかったです。

 

そして。

本書が執筆されたのは1986年です。著者は「生の欲望や、かくあるべしなど完全欲への囚われが強くなく、自己内省的な心理的内在化傾向が強くない若者が増えてきた」と言われています。

森田療法ができた1921年頃(昭和時代)には、完全主義的で「かくあるべし」と頑張る人が多く、従って今よりも森田療法が有効だった可能性があります。

時代とともに、当時とは異なった性質の人が増え、森田療法的な「不安なままでも実践せよ」との考え方が合わない人も出てきた可能性があります。

私は、旧世代なのでしょうかね。上述の通り、参考になり、生活に活かせる点がありました。

以上です。

本書「森田療法」にご興味を抱かれた方は、ぜひ読んでみてください!

 

 

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