濃い人間関係が嫌いな人のための〔コミュニティ〕のあり方【非社交的社交性】って面白いですね!
【非社交的社交性】という言葉があります。
哲学者イマヌエル・カントの言葉だそうです。
曰く、カントは、家族を中心とする血縁関係を厭い、友人を中心とする信頼関係を拒否し、性愛を中心とする愛情関係を嫌悪していたようです。
が、一方で、毎日数人の客(役人、商人などです。哲学とは無縁な男性だけだったそうです)を午餐に招き、大いに歓談にふけっていたそうなのです。
要するにカントは、人間嫌いという訳ではなく、いかにして気に入った人のみ受け入れ、気に入らない人を遠ざけるかというわがままな(?)人間関係を実現していたのです。
さて、今回ご紹介する本「非社交的社交性 大人になるということ」を書かれた中島義道氏は、「人を嫌うということ」「人間嫌いのルール」等の本を執筆されているように、嫌いな人がたくさんいるし、冠婚葬祭をはじめとするあらゆる儀式が大嫌いな方です。
とは言いながら、完全孤立は怖いという・・・
そのような中島氏は、おそらくカントのあり方なども参考にされたのでしょうね。
本人曰く、「自己中心的な自立した者同士」の淡い関係を築くべく、40歳くらいからせっせと努力されてきたようです。
そして現在は、「哲学塾カント」を主宰することで、このような関係を築くことに成功されているようですね。
実際には、本書後半で語られているような、中島氏でさえ理解の難しい、けれどもどこかユーモラスな人々(主に若者たち)と、そこそこに濃い人間関係を持ちながら日々の生活を送られていらっしゃるようです。
儀式的な人間関係は完全に断ち切りながら。。。
う~ん、確かに。
濃密で固定的な人間関係は避けたくて、かと言って一人は避けたいというような人がコミュニティに所属したい場合は、このような形態が一つの解になり得ますね。
全ての人をオープンに受け入れるのではなく、趣味や目的で一致した、すなわち比較的気が合うと思われる人たち限定のコミュニティを作るというのは、興味深くて面白い考え方だと思います。
中島氏は20年以上前から計画的にやってこられた、とのこと。すごいことですね。
さて、コミュニティに関する話は以上で。。。
本書のサブタイトルは「大人になるということ」で、中島氏のような哲学を志す若者、嫌いな人がいるなど生きづらさを抱える若者辺りを読者層として想定しているのかな、とも思います。
若者に対するメッセージらしき記述があったり、中島氏の半生が語られたりで、エッセイ風で面白いとも思いました。
中島氏の他書と比べると、相対的に気楽に読むことができる本かも知れません。
拝読してみて個人的には、中島氏って、書かれている本のタイトルに反して、かなりの社交性を身につけた方のように思えました。
ご興味を持たれた方は、一読されてみてはいかがでしょうか。