過渡期には違いないですが・・・知っておいた方が良い「ブロックチェーン」のお話。-野口悠紀雄氏の【ブロックチェーン革命】-
本屋に行くとおびただしい数の「ビットコイン」の本が出ていますねぇ。特定の通貨だけでなく「仮想通貨」全般を解説した本も多々あります。
このような仮想通貨を支える技術である【ブロックチェーン】という言葉もどんどん有名になってきています。
正直なところ私も、「ブロックチェーン」と聞いて、「新しい分散処理技術のこと?」という程度のことしか頭に浮かばず・・・
その仕組み、特長、問題点、応用可能性などについては、よく分かっていません。
野口悠紀雄氏曰く、人が新しい技術に出会ったときの反応は、
1.こんなものはまやかしだ。手を出さないぞ。
2.ひょっとすると大変なことが起きているのかも。
3.この素晴らしい技術が世界を変えた。私が最初から考えていた通りだ(皮肉ですね)。
といった段階を辿るというのですが・・・まさに第2段階的な気持ちで、私もブロックチェーン関連の情報にあたってみています。
今回ご紹介するのは、その野口悠紀雄氏の「ブロックチェーン革命–分散自律型社会の出現」という本です。
野口氏は本書に先立ち、2014年に「仮想通過革命」という本を出されていますので、私が知る限り、この分野でかなり先駆的な方ではないかと思います。
さて、ブロックチェーンとは?
公開分散台帳で、取引などを行う仕組みのことです。
何のこっちゃ?ですよね。
もう少し申し上げると、
A)記録がインターネット上に公開される
B)分散的な仕組みで運用され、管理者が存在しない
C)運用コストが低く、また分散処理ゆえにシステムがダウンしない
D)事業主体である組織を信頼する必要がない(信頼に基づいて構築されたシステムではないが、不正行為をすると損になる仕組み、改竄には多大なコストがかかり、ほぼ不可能)
ということなのです。(個人的には、D)などはちょっと懐疑的ですけど。。。)
それゆえ、従来のインターネットの弱点であった、安価に信頼性を確立し、経済的に価値あるもの(=貨幣など)を送ることが可能になったのです。
ブロックチェーンの応用範囲は広く、ビットコイン送金をはじめとして、
文書の存在証明、土地登記、ブランド品の真贋判定、学習データの記録、シェアリングエコノミー、予測市場、クラウドソーシング、オンライン裁判、投票などへの応用も検討されているそうです。
う~ん、すごいですねぇ。これらが低コスト化され、オープン化されるとなると。
と言いながらも。。。
本書を読んでいていろいろと思いました。
例えば、あまりにも多くのサービスが乱立していますけれど、インターネット上のサービスでは「ネットワーク効果」と言って、利用者が多数にならないとうまく機能しないことも多いのです。
今後、淘汰が進むに違いなく、今が過渡期かな、というのが一点です。
さらには、金融業など既存のシステムを破壊してしまう可能性があるということは、かなりの反対勢力もあり得るということです。
例えば、既存システム側が上手くこの技術を取り込むことで、結局は従来通り、少数の大企業などが世界を支配し続ける可能性が多々あるということです。
実際、本書でも紹介されているプライベート・ブロックチェーンでは、「管理者(銀行など)が存在し、少数の人のみ参加するゆえデータ改竄の可能性もあり得る」点が指摘されていますし。
そして、倫理・モラルについて。
ブロックチェーンでは改竄などの不正行為をすると損をするような仕組みだとは言え、人々が運用することですから・・・人々が悪意を持って運用すること(不正取引など)が可能なわけで・・・
法的整備とか規制は最低限必要ではないかと思いますが、インターネットの世界では、国内だけに適用される法や規制では、簡単に抜けられてしまいますので・・・
「科学の悪用への対応」などと同様の倫理とかモラルが問われるのでしょうね。
現実的な対処法については、よく分かりません・・・
こんな感じでしょうか。
この「ブロックチェーン革命–分散自律型社会の出現」を読んでみての所感についてまとめると、
ブロックチェーン技術は、応用範囲が広い革新的な技術だが、過渡期である。今後、様々なサービスのなかで淘汰が進むはず。
動向は追っていきたいけれど、実際にこれら市場に参入するのは、投機的な意味合いもあるなぁ、ということです。
まあ、余裕資金があれば、仮想通貨を買ってみるのは「あり」かも知れませんね。
そんなことを思いました。