知っているようで、案外知りませんでした・・・ 池上彰さんの「そうだったのか!日本現代史」
2000年に「そうだったのか!現代史」を執筆された池上彰氏は、
その翌年の2001年に、本書「そうだったのか!日本現代史」を執筆されています。
「そうだったのか!現代史」はいわば現代世界史で、本書は現代日本史ですね。
さて、今回ご紹介させて頂く「そうだったのか!日本現代史」は、第二次世界大戦後の政治・経済の話題が中心となっています。
扱われるトピックスについてピックアップしてみると、
第一章:小泉内閣は生き残れるのか
第二章:廃墟からの再生敗戦国・日本
第三章:自衛隊が生まれた憲法をめぐる論議始まる
第四章:自民党対社会党~「55年体制」の確立
第五章:安保条約に日本が揺れた
第六章:総資本対総労働の戦い
第七章:日韓条約が結ばれた
第八章:教育をめぐって抗争が続いた文部省対日教組
第九章:豊かな日本への歩み高度経済成長
第十章:「公害」という言葉が生まれた
第十一章:沖縄は返ってきたけれど
第十二章:学生の反乱に日本が揺れた
第十三章:日本列島改造と田中角栄
第十四章:バブルがうまれ、はじけた
第十五章:連立政権の時代へ
ということで、
第一章の小泉内閣のみが当時最新の状況であり、第二章以降は戦後から時系列に書かれています。
以前、田原総一朗氏の現代日本史についてもご紹介させて頂いたことがあります。
田原氏の本は政治にかかわる「人」に焦点が当たっているのに対し、池上氏の本は「事象そのもの」を大局的に、流れも重視しながら書かれているように思います。
NHK記者としての視点という感じがします。
どちらを読んでも内容がダブることはほとんどなく、面白い読み物だと思います。
さて、本書を読んでいて私が印象深かった点を幾つか挙げてみます。
1つ目は「第六章:総資本対総労働の戦い」の三池闘争の話です。
今では、ストライキという行動自体をあまり見かけなくなりましたが、激しく労働者の権利を主張していた時代の状況が如実に分かります。
どこまで闘争するのか、そのバランスや程度が本当に難しいと思いますが・・・今は使用者側が強くなり過ぎていて、非正規労働者/正規労働者の権利がないがしろにされるケースも目立つように思います。
このような歴史をさらに学ぶことで、その時代とはまた違った手段で、行き過ぎることを避けながら、労働者の権利回復の主張ができるのではないかとも思いました。
2つ目は「第十章:「公害」という言葉が生まれた」です。
今はどうなのか分かりませんが、私が小学校の頃は、光化学スモッグ、水俣病などの話題が授業でもよく取り上げられていました。
それを聞いた私は、「これから産業がますます成長するので、これからさらに公害が増すのではないか? そうなったら、みんな生きられないよなあ」と大きな不安に駆られたことをよく覚えています。
時代は経て、近年だと中国の公害が話題になりますね。
日本ではまるで、公害の問題は収束しつつあるかのように錯覚しますが・・・
そんなことは決してなくて、
本書で取り上げられた公害の問題は継続中ですし、これだけ人工物が大量に使われている現在の状況を踏まえると、顕在化していない「公害の種」はまだ存在しているのではないか、もしくは今後生み出されるのではないか、と思わざるを得ません。
自然の中で暮らしていくのが健全なのかなぁ、と改めて感じ入りましたね。
まあ、このような感じで・・・
他の章の話題についても、1つ1つのトピックスについていろいろと考えさせられました。
現代とは情報に溢れ、変化のスピードがとてつもなく速い時代です。
本書で取り上げられているようなトピックスについて、聞いたことはあっても、頭の片隅に追いやられているようなものもあります。
けれども。
これらの歴史をしっかりと踏まえることが、現代を立体的に捉える・幅広い視点で考えるための基本にもなるなぁ、などと思わず偉そうなことを考えてしまいました。
失礼いたしました・・・