現代史から【理想と現実のギャップ】について知る! 池上彰さんの「そうだったのか! 現代史」
テレビでおなじみのジャーナリスト:池上彰さんは、驚くほど多くの本を執筆されています。
政治・経済・歴史・宗教などに加え、最近では科学分野の本も出されているみたいですね。
今回は、池上さんの本の中ではかなり初期のもの、2000年出版なのでまだNHKにいらっしゃる頃に執筆された「そうだったのか! 現代史」をおすすめ本としてご紹介します。
タイトルとおりこの本は、現代史:第二次世界大戦後の世界が舞台となっています。
多分今もそうなのでしょうが、案外私たちは、学校において現代史を学んでいないように思います。また、年長の方でも、知っているけど全容を把握していなかったり、忘れていることがありませんか。
本書は、そんな学生の方や、社会に出たての方が現代について俯瞰するのも良いし、すでに社会に出て幾つかの現代史を肌で知っている成人の方が読んでも良い本であり、おすすめですよ!
まず、目次を見てみましょう。
扱われている内容は時系列に沿ったものではなく、
・冷戦が終わって起きた「湾岸戦争」
・冷戦が始まった
・ドイツが東西に分割された
・ソ連国内で信じられないことが―スターリン批判
・中国と台湾はなぜ対立する?
・同じ民族が殺し合った―朝鮮戦争
・イスラエルが生まれ、戦争が始まった
・世界は核戦争の縁に立った―キューバ危機
・「文化大革命」という壮大な権力闘争
・アジアの泥沼―「ベトナム戦争」
・ポル・ポトという悪夢
・「ソ連」という国がなくなった
・「電波」が国境を越えた!「ベルリンの壁」崩壊
・天安門広場が血に染まった
・お金が「商品」になった
・石油が「武器」になった
・「ひとつのヨーロッパ」への夢
・冷戦が終って始まった戦争 旧ユーゴ紛争
などが、トピックスごとに10~20ページ分、わかりやすくまとめられています。
列挙してみると事件、国家、個人名が混在した感じなのですが、十分に整合性が取られており違和感はまったくありません。
この本における印象的だった点、というよりこの本での主張は。
「理想と現実」についてしっかりと知る、
ということだと思います。
例えば、スターリンのトピックスでは、
社会主義は「虐げられた人民の解放」「人間による人間の搾取の根絶」を目標に掲げていました。
それを目指す政党から独裁者が生まれ、「人民解放」を叫びながら人民を虐殺するという、何とも考えにくい事態が発生したのです。
とあります。
これは別に、社会主義国家だけの話ではありません。
他の集団、体制、果ては会社組織でも見られる歴史的な事実です。
まあ、会社組織では虐殺はありませんけど、独裁者が生まれる、ということですね。
机上の理想と現実のギャップが大きいので、
「理想が実現しないのは、そうでない存在がいるからだ。撲滅しよう。」
単純化し過ぎかも知れませんが、あらまし、そのような論理に陥って過ちを犯した歴史があることに気づかされます。
人間とは、「欲望や感情に振り回されがちな存在であること、過ちを犯す存在である」ことを前提に、
むしろ過ちに陥りそうな際に、フィードバックし是正する仕組みを作ることこそ大切であるように感じます。
20世紀とは、国家・政治的イデオロギーと戦争・略奪の時代であったという見方もできます。
本書では、そのようなトピックスが、これでもかと言わんばかりに取り上げられています。
そのようなトピックスを取り上げ、問題意識を投げかけることにより、池上さんは「歴史にしっかり学びなさい」ということを仰りたかったのだと思います。
たいへんに僭越ながら、同感です。
歴史を知ることは大切だな、としみじみ思います。