いつでも何でも「ポジティブ思考」ではなく、否定的な考え方を断ち切ることが大切であることを知る! -オプティミストはなぜ成功するか-
もしかしてこの本は、「何でも楽観すれば、すべてはうまく行く」という、「あらゆる事柄を楽観主義に還元しようとする本」なのだろうか?
という疑いを持ちながら、この本を読み始めました。
しかし。
この本「オプティミストはなぜ成功するか」の中盤以降をしっかりと読めば、そんなに単純なことを言っていないことが明らかになります。(まあ、多少は楽観主義万能感を思わせる表現もありますが・・・それだけではない、ということです)
最初に、ごく大まかに、この本の論旨展開について書かせて頂きます。
1.楽観主義者であれ悲観主義者であれ、人生において様々な挫折や試練に遭遇する
2.そのような時、早く立ち直れる人と、
長期間引きずって、時には病気になってしまう人もいる
3.楽観主義者(=楽観的な説明スタイルを持った人)こそ、立ち直りが早い
楽観的な人は、悲観的な人比べて、成功しやすく健康な人生を送る
4.否定的な考え方(=悲観的説明スタイル)とは、
失敗した時などに、個人的(私が悪いのだ)で、
永続性(ずっとこういう状態が続くだろう)を持ち、
普遍性(ほかの何をやっても、うまく行かないだろう)を持った考え方である。
5.ただし、悲観主義者の人も、
認知心理学的な手法を使い、楽観主義へと変化していける
大まかに言えば、このような論旨展開です。
しかし。
この本には、タイトルから伝わらない、とても大切なポイントがあります。
それは。
・楽観主義は万能薬ではない。
必要に応じて使うものである、ということ。
例えば、先の見通しがつかない、リスクの大きなことを計画する場合は、楽観主義よりも適度な悲観主義の方が良いのです。また、細心の注意・用心が要求され、ある程度悲観的な見方が必要な職種もあります。品質管理、セキュリティなどは最たるものではないでしょうか。
一方でもちろん、楽観主義の方が大切な職種もあります。商品のセールス職など、失敗(=買ってくれないこと)に対して落ち込み放しだと成績に悪影響があるような職種が、その典型です。
また。
・楽観主義を身に付けるということは、
世の中をむやみに明るく見ることではない。
「否定的ではない考え方」を学ぶことだ。
無理やりに頭でポジティブに考えようとするのではなく、「否定的な考え=悪循環を断ち切ること」が楽観主義を身に付けるということなのです。
このことこそ、最重要なポイントなのではないでしょうか。
さて。
さらに2点、この本の後半部分にある印象的な内容について書かせて頂きます。
1つは、「最終章:柔軟な楽観主義のすすめ」についてです。
この章では、それまで言及されてきた楽観主義が、より大きな枠組みの中で位置付けられています。すなわち、個人主義が拡大し、家族・地域などの共同体の機能が低下してきている現代社会において、自身を守る有力な手段の「1つ」が楽観主義だと教えてくれているのです。
楽観主義一辺倒ではなく、現代社会の環境という大きな枠組みの中で、柔軟に楽観主義を役立てることが提案されています。
2つ目は、私の所感も含んだ印象的な話です。
この本の266ページ目「第8章:選挙も楽観度で予測できる」にある3,4行ほどの文章です。
章の名前とは全く違う内容なのですが・・・
非西洋文化の国々では、うつ病の発生率は、流行病といえるほど多くない。私たち(=アメリカなど西洋文化の国)の社会よりもずっと低いようだ。何かを達成することにそれほど取りつかれていない文化では、無力さや悲観主義がそれほど悪い影響を及ぼさないのかもしれない。
この本は、あくまでも、競争社会、達成重視型社会、成長重視型社会である現代社会の枠組み(西洋型社会)の中での対処法について語られています。
が、この文章で示唆されるように、案外と、この競争・成長・達成型社会からずれる、降りることこそが、安寧に生きるための一番の対処法かもしれないな、とも感じます。