自分自身を生きる=「積極的自由」が大切であるということ -エーリッヒ・フロム「自由からの逃走」-

本日は、エーリッヒ・フロム著自由からの逃走」についてご紹介します。

社会心理学の本になるのでしょうかね。きわめて著名な本なので、その名をお聞きになられた方もいらっしゃるかと思います。

この本は1941年に出版されました。

私が手元に持っている書を紐解いてみると、日本語版としては、昭和26年(1951年)初版、新刊化(改訳)を経て、何と121版を重ねています。

今もって新刊を手に入れることができる超ロングセラー、古典的名作です。

フロムは、ユダヤ系ドイツ人で、1900年に生まれました。この本の刊行時期・内容等も踏まえると、多分にファシズムを意識したことは間違いありません。というより、ファシズムを生み出した原因の分析が主要テーマの一つとも言えます。

ここでごく簡単に、この本の前半部分の主題をまとめてみます

・中世社会が崩壊し、人々は政治的、経済的、精神的な束縛から解放され、自由(=本書内では「消極的自由」とよばれています)を得た。

・自由により近代人は、独立と合理性を手にしたが、一方で孤独感、無力感を強く感じることとなる。そしてこの孤独感や無力感は耐え難いもので、人々は「自由の重荷」を感じることとなった。

・そうして人々は、この「(消極的)自由の重荷」から逃れようと、新しい束縛(=権威、文化的な鋳型)へと駆り立てられるのである。人びとは新たな依存と従属を求めるのである。

そしてこの状態は、個人個人にとっても、決して安定した状態ではない。自我を失った状態である。

この「新しい束縛」の一つがファシズムであることは、言うまでもありません。

では、この「自由からの逃走」の主旨は、「人間とは自由を与えられると同時に、孤独や恐怖を感じ、そこから逃げ出すために新たな束縛、従属を求めるものだ」という法則を示した、ということなのでしょうか?

否!

違います。

私は、後半(とは言え、1章のみですが・・)で語られる内容こそが、現代の我々が大いに考えなくてはならない事柄ではないかと思います。

それは。

上記要約にも少し現れていますが、フロム曰く、人々は「消極的自由」獲得の状態では安定せず、「独立と自由=孤独と恐怖」に陥ってしまう面があるといいます。

フロムが後半で強調しているのは、そのような消極的自由ではなく、「積極的自由」の獲得ということなのです。

あまり詳しく書くのもどうかと思うので、ごくごく簡単に要約すると、

自分自身であること、すなわち積極的、自発的に自ら考え活動し、自身が自身の主人公になる、ということなのです。

この本自体は社会心理学的分析が中心となっており、「積極的自由」については1章が割かれているに過ぎません。なので、具体的にはそれ程多くのことは書かれていません。

この本は、自分自身がいろいろと考えるきっかけにするために、読むということで良いのではないでしょうか。

先日書かせて頂いた、「監獄の誕生」や「遅刻の誕生」の記事のように、日々何となく当たり前に思っていることが、実は全く普遍的なモノではなく、歴史的な流れ、あるいは意図などにより作られ、身に付いたものである、ことも多々あります。

本書で話題となっている「自由」についても、ただ漫然と受け止めるだけではなく、新たな依存と従属を生み出すという循環に陥ってしまったり、ニヒリズムに陥ってしまう可能性があることをしっかりと踏まえ、「意識的に生きる」ことが大切だと教えてくれているのではないでしょうか。

大いに考えさせられる本です。

☆社会心理学、心理学などの記事を書いています!

よく読んで頂いています。よろしければ、どうぞ!

社会や個人の内面に「規律が生まれる仕組み」を明らかにする -フーコーによる「監獄の誕生」-

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