「フーコー」(貫成人氏):当たり前をひっくり返し、常識に風穴を開ける! -哲学者たちのおすすめ入門書-
今回のテーマは、20世紀の哲学者・思想家であるフーコーについてです。
今回は貫成人氏の本「フーコー―主体という夢:生の権力」をとおしてご紹介させて頂きます。
フーコーの思想(問い)
さて。
理性、真理、主体、人間、自由、生命、家庭・・・
私たちはこれらのものを、それ自体として「価値あるもの」「追求して当然のもの」と考え、感じています。その存在を疑ったり、問題にするだけで道徳的に非難されるほど侵すべからずものとしても考えられています。
フーコーは、これらの存在について、
・なぜこれらのものは価値あるものとされているのか?
・はたして「もともと」価値あるものだったのか?
・それらは本当に価値あるものなのか?
このような問いをたてたのです。
本書では代表的な著作「狂気の歴史」「言葉と物」「監獄の誕生」「性の歴史1」の解説を通じて、フーコーの思想を分かりやすく解説してくれます。
それらフーコーの著作では、中世以降の歴史に言及されていたリ、学校制度や性意識といった我々にとって身近な事柄が取り上げられています。
そうすることで我々にとっても身近で、当たり前のものとして受け止めている事柄や制度が、実は最近作り出されたものであったり、権力による巧みな管理の仕組みであることが浮き彫りになり、冒頭に挙げた価値とされるものが、果たして恒久的で自明なものだろうかという問いを我々に突き付けてきます。
常識を覆す興味深い事例
我々の常識を覆す印象に残った例を一つだけ挙げさせて頂きます。(フーコーの著作内容ではなく、「遅刻の誕生」という書籍から引用された例です)
我々日本人は時間に厳格である、と信じていますよね。
実はこれは恒久的なものではなく、明治時代以降=鉄道普及後のことと考えられるのです。明治時代、鉄道建設のため日本にやってきた外国人の証言として「日本人は時間を守らないことに、みな一様に腹を立てていた」という記録が残っている、と書かれています。
江戸時代の日本では、例えば「巳の刻」というように、2時間もの幅をもって時間をとらえる習慣があったため、上記のような厳格さは望むべくもなかった、ということですね。
さらに言うと、腹を立てた欧米人自身、明治維新の少し前にようやく、時間を守るという概念を持つに至ったばかりだったのだそうです。
いかがでしょうか?
意外ではありませんか?
他にも、パノプティコンや学校制度など興味深い事例があるのですが、それはまた他の記事で改めて書きたいと思います。
最後に。
大学教授である貫成人氏は、学生諸君に対し「もし哲学の本を一生に一冊しか読まないつもりならば、フーコーを読むのがいい」と話しているのだそうです!
学校や性など、きわめて具体的な事柄を扱いながらも、西洋哲学において当たり前のように前提されている事柄をことごとくひっくり返し、その結果、我々がいつの間にか思い込んでいた常識にも風穴を開けるからだそうです。
個人的には、一冊ではなく、哲学の本を五冊しか読まないならば、フーコーを選びたいですね。
一冊だけは、とても選ぶことはできません・・
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