はじめての構造主義(橋爪大三郎):20世紀の代表的思想を分かりやすく語る! -哲学者たちのおすすめ入門書-
今回は、構造主義についての入門書・解説書「はじめての構造主義」についてご紹介します。
この本は、昭和63年(1988年)初版なので、発刊以来30年近くたっています。が、今も新刊本として購入可能ということなので、超ロングセラーと言えるでしょうね。Amazonでみても、50を超える多くの書評が載っています。
それからこの本では、多岐にわたる構造主義において、主にレヴィ=ストロースに絞って解説されています。そういった意味では「レヴィ=ストロースの入門書・解説書」とも言えます。
さて、構造主義とは?
個々の人間の思考を超えた、それを包み込むような領域がある。それは人間には不可視なものだが、一定の秩序をもったものであり、我々の文化をも形成している。これらのことを言語学、数学などを駆使して研究する学問のことである。
といったところでしょうか。
まあ、現代思想の元祖ともいえ、多くの思想家が20世紀中の長い期間研究し続けたものを一括りにしてしまうことは無理だと思いますので、上記の説明では到底不十分ですね。著者も本書で、苦心しながらも易しくいろいろな表現でそれについて語ってくれます。
本書の内容について
本書では、大きく分けて「レヴィ=ストロースの歩み(生涯)を振り返る」「構造主義のルーツを辿ってみる」の2本立て(2ステップ)で構造主義にアプローチしています。
その中で、レヴィ=ストロースの大きな業績として挙げられる
1.親族の基本構造の解析
2.神話の構造の解析
について、
解析のために駆使した言語学(音韻論)、クラ交換(南太平洋で行なっている「交換の風習」)、数学などを、可能な限り易しく説明してくれます。
さらには著者独自の見解なのですが、構造主義の源泉として「遠近法」についても丁寧に語ってくれています。
私自身、この著作を読むまでは、構造主義(というより、レヴィ=ストロース)が、ここまで数学、記号論、言語学と密接に関連する学問だとは認識していませんでした。
我々の文化のすべてが、構造主義で言われるような「相対的」で「歴史と切り離されたもの」だとは思いませんが、それでも興味深いアプローチだと思います。
教科書レベルの知識から一歩踏み込んで、構造主義について理解できる入門書だと思います。
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