「ニーチェ」(貫成人氏):従来の西洋哲学をひっくり返す「反‐哲学」 -哲学者たちのおすすめ入門書-
今回は貫成人氏の「ニーチェ―すべてを思い切るために:力への意志」を取り上げ、ニーチェについて書かせて頂きます。
書店や図書館へ行ってみると、カントと同程度、ニーチェに関する本が多くあるように思います。ニーチェの思想、というよりはむしろ、ニーチェによって語られる言葉自体が多くの人にインパクトを与えているような気がします。「ニーチェの言葉」といった類の本が目立つように思うのですよ。
まあ、全くの私見なので、正確なところはよくわかりませんが・・
さて本書は、ニーチェ本人の言葉という訳ではなく、ニーチェの思想に焦点をあてて解説された本です。
キーワードは、ルサンチマン、ニヒリズム、永遠回帰、力への意志、超人、眺望固定病といったあたりでしょうか。これらキーワードを用いて具体例を交えながら、その関係性や全体像について丁寧に説明されています。
ニーチェの思想
ちょっとここで、上記キーワードを用いて、ニーチェが説いた思想を要約してみましょう。
・ニーチェはまず、従来、価値があると考えられていた善悪、正義などといった古くから信じられてきた道徳的なものを否定した。
・それどころかニーチェは、あらゆるものが「力への意志」という相互関係的な力のなかで生まれてくる「一瞬の眺望」に過ぎないものであり、我々はそれらをあたかも永遠の実体のように見ているに過ぎない=錯覚である(ニーチェ曰く、このような誤った見方を「眺望固定病」といいます)、とした。
・そのような構造を暴いた上で、価値のあるものは存在しないという「ニヒリズム」、すべてがいつまでも永遠に繰り返されるという「永遠回帰」であるこの世界を呑みこんだとき、その存在は人間を超えた「超人(=いわゆるスーパーマン的存在ではなく、「何も望まない存在」のこと)」となるのである。
といったところでしょうか。
まあ、10行程度では到底伝え切れませんね。ルサンチマンも入っていませんし。無謀な試みをしてみました。
現代に大きな影響を与えたニーチェ
ニーチェは、1970年代以降のポストモダン隆盛の頃、マルクス、フロイトとともに「思想の三統領」の一人とされていたそうです。この、従来の西洋哲学を「脱構築」してしまうようなニーチェの思想は、フーコーやドゥルーズといった現代思想家に大きな影響を与えています。
従来、当然のものとして受け止められてきた西洋哲学をひっくり返すという「反‐哲学」の思想は、たしかに現代にも大きな影響を与えていると思います。
ニーチェ自身の言葉のインパクトも大きいのでしょうが、現代に大きな影響を与えているニーチェの思想のアウトラインを知ることも大きな意味のあることだと思います。
☆哲学に関する関連記事のご紹介です!
哲人たちの解説・入門書はこちらです。
・カント(貫成人氏) :時代背景を踏まえた俯瞰的な語りが分かりやすい
・カント入門(石川文康氏) :カント原書を読むための準備本・橋渡し本
・新しいヘーゲル(長谷川宏氏) :網羅性、総体性等が魅力的なヘーゲル入門書
・ハイデガー(貫成人氏) :存在の意味を追求したハイデガーの思想を俯瞰する
・ハイデガー 存在神秘の哲学(古東哲明氏) :「在る」の現実を味わう
・プラトンの哲学(藤沢令夫氏) :壮大な哲学を創り上げた西洋哲学の祖
・デカルト入門(小林道夫氏) :「私は考える、ゆえに私はある」だけではない
・ニーチェ(貫成人氏) :従来の西洋哲学をひっくり返す「反哲学」
・はじめての構造主義(橋爪大三郎) :20世紀の代表的思想を分かりやすく語る
・フーコー(貫成人氏) :当たり前をひっくり返し、常識に風穴を開ける
こちらは、全体へのリンクです。
【哲人たちのおすすめ解説・入門書はこちらです!】
哲学入門書はこちらです。
・哲学史を学ぶ意味を知り、哲学史を概観する -貫成人教授の「哲学マップ」-
・「考えて、知ることが哲学である」 -池田晶子さんの「14歳からの哲学」-
・哲学の入門書であるとともに科学の限界についても言及 -哲学のすすめ-
・哲学紹介、用語解説が参考になる:佐藤優氏も絶賛する -世界十五大哲学-
・4つのポスト状況を俯瞰的に分かりやすく語る -現代思想の教科書-
こちらは全体へのリンクです。
【哲学史、哲学一般についての記事はこちらです!】