「ハイデガー」(貫成人氏):存在の意味を追求したハイデガーの思想を俯瞰する -哲学者たちの入門書-
今回は、このブログでも何度かご紹介させて頂いている貫成人氏による「ハイデガー―すべてのものに贈られること:存在論 (入門・哲学者シリーズ)」についてご紹介します。
この本も貫氏の「カント」同様、ハイデガー思想の入門書という位置付けとなります。
周知のとおり、ハイデガーがその生涯を通して問い続けたことは「存在の意味」、すなわち「ある」とはどういうことか、ということです。
われわれの日常生活では自明のこととして受け止められている、この「ある」ということについて、本書の中で貫氏は手を替え品を替え、様々な表現で説明(示唆?)してくれます。
なかでも、なかなか面白いと思ったのが、以下のくだりです。
それは、ペットボトルに関する、他の哲人たちの問い・語り・アプローチとの比較を通じての説明です。
それは。
プラトンは「ペットボトルの本質は何か」と語り、
アリストテレスは「ペットボトルがどのような素材でできており、どうしてできあがり、どんな目的のために用いられるのか」と語り、
デカルトは「それがペットボトルと言える十分な証拠がある」というアプローチをします。
これに対し著者は「それらはペットボトルという存在者の仕組みについて語り、それが存在していると言えるための条件を語っているに過ぎない」と言います。
それらは、「その存在者(ペットボトル)が存在しているとはどういう意味なのか」を語ったことにならず、まさにハイデガーはこの点を問題にしたのだ、と言います。
ハイデガーにおいては、まず「問い」を正確に把握しないと後に続きませんので、このような点から入るのは素晴らしいのではないでしょうか。
本書では、例によって貫氏の分かりやすい説明で、全体が俯瞰的に語られるわけですが、少ない紙面にも関わらず、代表作「存在と時間」にとどまることなく、その後の「ハイデガーの転回」、すなわち「存在の意味」から「存在への真理(最後は、「存在」という言葉すら止め、「存在」を×印に代替したようですが)」への転回の経緯についても、芸術作品へのアプローチの説明などを通じて語ってくれます。
変な表現かも知れませんが、本書は読了後、もう少しハイデガーについて読んでみたい、次なる本(原書には向かわず、入門・概略的な本だったのですが・・)に進みたい、と思わせてくれるような本でした。
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