田中角栄氏本がブームですね。 同時代を生きた石原慎太郎氏による【天才】は、「田中角栄氏独白」形式で描かれています

 

石原慎太郎氏が田中角栄氏について書いた本「天才」が、売れているようですね。

この本に限らず、ここ数年田中角栄氏に関する本が多く出版されており、その多くは角栄氏の人物像、語録、政治面など多種多様な面に焦点を当てたものとなっています。

さて、この本「天才」について。

新聞広告欄などでこの本の存在を知っていましたが、本屋でたまたま手に取ってみて、この本が石原氏の手による田中角栄氏の独白という形で書かれていることを初めて知りました。

いかにも角栄氏がしゃべりそうな、ざっくばらんな調子で、その生い立ちから亡くなるまでの出来事をざっと語られています。石原氏の文章がうまいこともあり、スイスイと数時間で読み終えることができるのではないかと思います。(一点、文末が「○○だが。」で終わる表現が多いことに若干の違和感を感じます。。)

石原氏の想像上のセリフじゃないか、という突っ込みがあろうかと思いますが、それでも、同時期に議員として活動していた石原氏のセリフなので、なかなかの臨場感を持って捉えられます。

 

それにしても、角栄氏批判の急先鋒であった石原氏に「こんなに印象に残った人物はいない」「異形の存在感」と言わしめる角栄氏とはどのような人物だったのでしょうか。

それは、長いあとがきで書かれた石原氏のエピソードに見ることができるような気がします。

それは。

ある時(=角栄氏が総理を辞めてしばらくたった頃)、テニスクラブにいた石原氏は、角栄氏がいる場面に遭遇します。

当時、角栄氏の金権政治批判をしていた石原氏は少々バツが悪く思い、その場をやり過ごそうとしましたが、角栄氏曰く「こっちに来ないか?」と。 角栄氏自らが石原氏の椅子を持ってきて席を作り、飲み物を取り一緒に話をすることになったのです。

角栄と同席していた人が石原氏の同僚でもあり、石原氏と同僚との関係も微妙になりそうな場面でしたが・・・

例え石原氏が、角栄氏に対して微妙な応答をしようとも、角栄氏は全くもって動じることなく、ざっくばらんに応えます。隣の同僚がうろたえるような、微妙な応答にも関わらず、です。

恐らく、あらゆるケースで、このような懐の深い対応をしてきたのだろうと思います。(もっとも、晩年に創政会決起された頃は、そうではなかったのでしょうが・・・ )

清濁併せ呑む、というか、敵味方を併せ呑むといえばよいのでしょうか、大きな器を感じさせます。

 

このような田中角栄氏の人間性こそが、多くの人を惹きつけたのでしょうね。

何もバックボーンが無い中、徒手空拳、首相まで登りつめるという生涯は日本人好みですし、ここにきてブームになることは頷ける気がします。

当然ながら、金権政治を極端に推進した点など、負の側面があり、その点を評価する気は毛頭ありませんが。。。

 

1970~80年代にかけて、あまりに負の遺産ばかり強調されてきた面がありますので、このように正の面が見直されるのは良いことではないでしょうか。

正負どちらかに偏るのではなく、正の面、負の面、バランスよく見ることが大切だと思います。

 

 

 

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