「もやい」の稲葉剛氏の「生活保護から考える」は、現場目線に立った包括的な考察に優れた本です。
今回は、NPO法人自立生活サポートセンター「もやい」の理事長(当時)である稲葉剛氏による「生活保護から考える」をご紹介させて頂きます。
「もやい」では主に、貧困に関する生活相談・支援事業、および入居支援事業(アパート入居時の保証人になる)をされています。
この本は、そのような稲葉さんご自身が、過去20年間で3000人以上の方の生活保護の申請に立ち会われてきたご経験を元に、そしてこの本執筆時の2013年11月時点の生活保護法改正に対して「流れに掉さす」ことを目的として書かれています。
この本では、現状の生活保護制度の問題点が浮き彫りにされると同時に、制度改正による懸念材料が、体系的、論理的に良くわかります。さらには、ご自身が考える改正案などもあります。
そういった意味では、雨宮処凛さんの本と同じ立場(当事者寄り)に立ち、それをより詳しく体系的に書かれた本、という位置付けだと思います。
制度自体に関する気付き点については別記事にまとめたいと思いますので、ここでは章ごとのあらすじと主張について簡単に書いてみます。
第1章:2013年の生活保護基準の引き下げ
・引き下げの根拠への異議
・引き下げによる現利用者への影響
・適用可否基準の引き下げによる保護制度からの排除
(生活保護が適用できる額が上がったため、生活保護が利用できなくなること)
・就業援助制度など他の制度への影響
第2章:いわゆる「水際作戦」の実例とその対応案
・水際作戦に至った自治体側の背景などについて
第3章:親など、親族の扶養義務に関する問題点
・芸能人親族の生活保護利用の件に絡めた考察
第4章:具体的な事例
・路上生活からの復帰例など、3例が分かりやすく書かれています。
第5章:生活保護法改正案と生活困窮者自立支援法案の問題点
・生活困窮者自立支援法案は、湯浅さんが取り組まれていたパーソナル・サポート事業の恒久化とも言えるものですが、問題点もあります。
いかがでしょうか。
本当に多面的な考察がされていると思われませんか。
HowTo生活保護で制度について詳しく知り、この本や雨宮さんの本で当事者目線の問題点を多面的に知ることができるのではないかと思います。
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