「贈与」「互恵」「拡張家族」という興味深いコミュニティのお話 -評価と贈与の経済学(おすすめ本)-

 

内田樹さんと岡田斗司夫さんによる対談本「評価と贈与の経済学

面白い発想・内容がありますので、紹介します。

 

経済学、というタイトルですが、経済学の専門的な話は出てきません!

対談本なので、話があちこちに飛んだり、(対談ゆえ、踏み込むことが

難しいため)話の根拠が明確でない箇所もあるわけですが、それでも、

「面白い発想だなぁ」と思う点が結構ありましたので、紹介します。

 

さて、印象的な内容について、少しだけ引用してみましょう。

「オレはもう十分に楽しんだから、もういらない。あとは若い人たち、

がんばって」と相対的に資源に余裕のある人が若くて貧しい人たちに

「チャンス」を贈る。(P.87)

 

それは起業資金でもいいし、授産機会でもいいし、ネットワークや情報

でもいいし、「食える演芸」でもいい。とにかく、年長世代からの「が

んばってね」というフレンドリーな贈与が社会的フェアネスを基礎づけ

る、そういう時代に必ずなる。(P.87)

 

贈与してくれた人に返すのではなく、世代を超え、自分が獲得した社会資源を

退蔵しないで、円滑に次に流していけるようなラインを作る、ということを

言っているのです。

 

そして、その背景は、次の点にあります。

・近代150年を振り返っても、就職が安定的に確保されていた時代なんて、

ほとんどなかった。(P.52)

・今している努力に対して、未来の報酬が約束された時代なんて、これまで

だってなかった。明治維新から後、20年おきに戦争していた。約束された

未来なんてなかった。(P.53)

・成功というのは、他人が手を差し伸べてくれて、引き上げてもらって、

ようやく岸にたどり着いた、というようなことである。(P.54)

・報酬は運である。運だからこそ、成功したら他人に回さなければいけない。(P.54)

 

さてその一方で、内田氏と岡田氏がどのようなことを考えたり、実行されて

いるかと言うと、例えば、内田氏の場合(構想だそうですが)、

・500人くらいの顔の見える人たちで、若い人たちが活躍できるように、

皆でチャンスを提供する。

お金がある人はお金を、コネがある人はコネを、知恵がある人はアイデアを

出す。相互扶助の互恵的な集団を作りたい。

これを拡張型家族と呼んでいる。血はつながらなくとも、動物であろうとも、

責任が発生した瞬間に、家族として成立している。(P.97,98)

 

岡田氏の場合は実際に、FreeEXという、一般公募した社員が会費を支払い、

社長である岡田氏を養う、いうユニークな組織を作られています。

まあ、会員制サロンと言えなくもないのですが。

 

岡田氏は、会員制により、お金という生活基盤を確保したうえで、

無償で出版、イベントなどの活動を行なうことができます。一方で、社員側の

メリットは、ワクワクと岡田氏の著作を一緒に制作できる、という点です。

 

こちらは、贈与という発想とはちょっと違うと思いますが、「岡田氏の元に、

仕事制作を通じてつながり合うコミュニティを作る」ということをされています。

 

これ以外にも、「評価経済社会」に関する考察、内田氏の身体論など、

興味深い話がいろいろとあるのですが、まあこれくらいにしておきましょう。

 

もちろん、マクロ的にはどうなのか、など突っ込みどころはありそうですが、

面白い発想をされるなぁ、と思い、取り上げました。

 

文庫本やKindleなどでも出版されていますので、購入しやすくも

なっていると思います。

 
 

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