テーマは「格差」 -トマ・ピケティ教授の21世紀の資本2-

 

トマ・ピケティ教授の「21世紀の資本」の続きです。

 

昨日は、r>g、すなわち「民間資本収益率=不動産、金融資産などの資本が

生み出す収益率」が、常に「所得と産出の成長率=経済成長率=所得の伸

び率」を大きく上回っていることが、長期的な格差の拡大を生み出している、

という歴史的な事実について書きました。

 

本日は、拡大していく格差に対し、どのような処方箋があるのか、という

です。

 

ピケティ氏は、累進的な資産課税、すなわち資産をたくさん所有している人

ほど、大きな比率の税金をかけるべきだ、と言っています。

 

その場合、国によって課税のレベルが違っていては、グローバル企業や

お金持ちの人がそちらに集まってしまうので、世界的な協調が必要

とも言っています。

 

けれども、こんなことは実現できっこない、という意見が多くあります。

(本人も認めていますが。)

 

たしかに、直観的に私も、世界協調で資産に対する課税を強化すること

は難しいと感じます。

個人的には、それよりむしろ、不労所得を得る過程(例えば、外国為替

取引時の課税であるトービン税や、かつての日本で実施していた有価

証券取引税など)で課税した方が良いような気もします。

※これらはやろうと思えば、1国内で実施することができる点がよいと

思います。が、新自由主義に真向反対する概念なので、アメリカなど

からの強烈な反対により実現が難しいことに変わりはありませんが・・・

 

このような実現性が乏しい、という意見をはじめ、様々な批判に対して

ピケティ教授は本の中で何度も言っています。

 

「この本は、ベータ版(たたき台)である。これを元にいろいろな意見が

出てくること、優れた提案が出てくることを期待している」と。

 

反対意見も大量に出てきていることを踏まえると、この本の役割は

大成功した、と言えるのでしょうね。

 

最後にもう一点、ピケティ教授は、他の研究者と連携しながら

WTID(The World Top Incomes Database)という世界トップ所得

に関するデータベースを作成・公開しています。ここにアクセスすること

により、例えば日本のトップ1%の上位者の所得が国内の総所得の何%

を占めるのか、などのデータを取得可能です。これらのデータを公開する

ことで、他の研究者の研究促進が期待されます。まさしく、コンピュータ

業界におけるリナックス(Linux)などのオープンソース的な考え方だな

と思います。

 

さらに明日も、21世紀の資本に関わる記事を書きたいと思います。

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