Yoichi Tsuganiのフロー日記

「デカルト入門」(小林道夫氏):「私は考える、ゆえに私はある」だけではないことを知る -哲学者たちの入門書-

time 2016/05/17

 

皆様は、デカルトというと何を思い起こすでしょうか?

 

真理探究の方法としての「方法的懐疑」により全てのものを疑うことから始め、あの有名な「私は考える、ゆえに私はある」という真理に至る。

そしてそこから、精神と物体の2つの独立した実体から世界は成り立つという「物心二元論」を打ち立てた。理性への信頼に基づく合理論を打ち立てた哲学者。

ついでに言えば、書斎の中で思索に思索を重ねた、意識中心主義の哲学者、というイメージがあるかも知れません。

が。

この本「デカルト入門」を読むと分かるように、それは違うのです。というより、一部は当たっているけれど、デカルトの全てを語ったことにはならないのです。

 

まずは、そのデカルトの活動実績について

その活動は、哲学分野に留まりません。デカルト座標という言葉をお聞きになったことがあるかもしれません。解析幾何学などの数学分野での実績がありますし、慣性の法則も定式化しました。もちろん、現代科学の基礎となった機械論的自然観を打ち出したのもデカルトです。

とは言え、そのようなバリバリの合理主義を元にした哲学者、科学者というのがデカルトの全容ではありません。

自身の哲学を確立し、それに基づいて諸科学を構築したあと、あらためて、人間の情念や感覚的生のあり方の考察、「高邁の心」を核心とする「道徳論」を展開するという、諸学問に至る極めて大きなスケールを持った人物なのです。

 

そして、書斎にこもった思索者という点も大きく違います。

フランスで生まれたデカルトですが、オランダの軍事学校に入り、ドイツでの戦争に従軍、フランスで科学者・文人らと交流、晩年はスウェーデンの女王クリスティーナに請われてストックホルムで過ごす、という波乱万丈でヨーロッパ中を股にかけた人生を送っているのです。

おまけに生涯の中で、追いはぎを剣で屈服させる、ある女性をめぐって決闘を行う、などの武勇伝にも事欠かないという。。。

 

思索家であるだけでなく、行動力に長けた、幅広い知見をもった人物であることが伺い知れます。

デカルトの活躍した17世紀頃は、まだ学問が複雑分化しておらず、このような学問横断的な多岐にわたる活躍をみせる人物が出る時代だった、とよく言われますが、それでもそのスケール感は突出していると思います。

 

さて、そのようなデカルトですが、私の関心を引くのは、心身の合一(心と体がお互いに影響を与え合う)をも認めたという点と、愛・高邁の精神を核心とする道徳観をしっかりと持っていたという点です。さらに言うと、神を頂点とした世界観さえ持っていた点です。

考えてみれば、上述のような「行動する人」であるデカルトが、他者の人情にふれたり、戦争を通じて、愛・高邁・徳などに関心を抱くであろうことは容易に想像がつきます。

それが「私は考える、ゆえに私はある」という点を中心に強調されるようになったのは、著者曰く、ドイツ観念論などでこの考え方がクローズアップされたからだ、ということです。

個人的には、物心二元論に賛成する立場ではありませんが、現代社会に大きな影響を与えている思想であることは事実です。この本「デカルト入門」を通じて、その広い活動領域を含めて今一度俯瞰してみるのも良いのではないかと思います。

 

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