ブッダ最後の旅【大パリニッバーナ経】は、ブッダ入滅の物語であり、ブッダの教えのポイントも端的に示されています。 《原始仏教・原始仏典について》
「大パリニッバーナ経(大般涅槃経)」という経があります。
長部経典収蔵です。
この経は、主に二つの面が特徴的な経典だと思っています。
一つ目は、その題名通り、ブッダ入滅の前後が克明に描かれている点です。
すなわち、インド各地を旅し、クシナーラの地の二本のサーラの木(沙羅双樹)の根元で最後の説法を行った後、入滅されたブッダの物語としての側面です。物語という言い方が適切かどうかわかりませんが・・・まあ、物語とさせて頂きます。
ブッダおよび多くの弟子(修行僧)たちから構成されるサンガの様子、雰囲気が克明に、頭の中にイメージとして伝わってきますし、旅先での土地の人々との交流や説法、神霊や悪魔とのやり取りなどの様子もありありと伝わってきます。
入滅のほんの数ヶ月前から始まる本経では、齢を重ね八十歳くらいになったブッダの人生が、雨季を除き、街から街へと移動し説法を重ねられたものであったことが伺えます。アーナンダとの関係性が特に深かったことも伺えますね。
そんな説法・旅を重ねてきたブッダがクシナーラの地に至り、入滅する直前の記述こそが本経のクライマックスであることは言うまでもありません。
世の理とおり、入滅しようとしているブッダに対し、アーナンダが嘆き悲しむ姿を見て、
やめよ、アーナンダよ。悲しむな。嘆くな。アーナンダよ。わたしは、あらかじめこのように説いたではないか。
――すべての愛するもの・好むものからも別れ、離れ、異なるに至ることを。
およそ生じ、存在し、つくられ、破壊さるべきものであるのに、それが破壊しないようにということが、どうしてありえようか。アーナンダよ。そのようなことわりは存在しない。(中略)
アーナンダよ。お前は善いこと(注:ブッダに仕えてくれたこと)をしてくれた。努めはげんで修行せよ。速やかに汚れのないものとなるだろう。
と諭されるのです。最後に予言めいたことを言われていることが珍しいですね。
さらには、
お前たちのためにわたしが説いた教えとわたしの制した戒律とが、わたしの死後にお前たちの̪師となるのである。
という言葉の後、サンガや教えに関するお話が少しあった後、あの有名な最後のことば、
さあ修行僧たちよ。お前たちに告げよう。
「もろもろの事象は過ぎ去るものである。怠ることなく修行を完成なさい」と。
と仰り入滅される場面は、心に迫るものがありました。
中村元博士の訳が素晴らしいのでしょうね。このことばに限らず、多くのことばが心に残りました。ブッダの入滅前後の様子が、ありありと描かれています。
さて、二つ目です。
この経は、ブッダの教えを端的に学ぶという点でも優れていると思います。各々の細かな内容はほとんど書かれていませんが、ブッダの膨大な教え(説法)の中でも大切な、というか、ブッダの教えのアウトラインが随所に示されています。
例えば、以下のブッダのことばに端的に表れているのではないでしょうか。
修行僧たちよ。四つのすぐれた真理をさとらず、通達しないがゆえに、この長い時間にわたって、わたしもお前たちも、このように流転し輪廻したのである。
その四つとはどれどれであるのか?
(以下、私が重複部分をまとめて表現しています)
修行僧たちよ。「苦しみという尊い真理」「苦しみのもとという尊い真理」「苦しみの止滅という尊い真理」「苦しみの止滅にみちびくという尊い真理」を悟らず、通達しないがゆえに、この長い時間にわたって、わたしもお前たちも、このように流転し、輪廻したのである。
四聖諦のことですね。ここでは、これ以上詳しくは語られていません。
その後、「戒律」「精神統一」「智慧」について講話された、と経が続いています。こちらも詳しい内容は書かれていませんが。。。
私たちが学ぶうえで、これらの用語を関連の経から紐解いてみると良いことが示唆されているように思います。膨大な経の中から、大切な教え(用語)を抜粋できるのです。
また、ブッダ入滅後も、たもって、実践、実修していく「法」については、
四つの念ずることがら(四念処)、四つの努力(四正勤)、四つの不思議な霊力(四神足)、五つの勢力(五根)、五つの力(五力)、七つのさとりのことがら(七覚支)、八種よりなるすぐれた道(八聖道)である、
と説かれています。
これらが修行において大切なことであり、結果、多くの人々の利益・幸福のためになると説かれているのです。
大般涅槃経(大パリニッバーナ経)は大作です。今回書かせて頂いたことは、ほんの一部です。
他記事でも追加で書かせて頂きたいことがありますが、書いたとしてもまだ全然書き切れないです。。。
私が本経に接したのは、中村元博士監修の「原始仏典〈第2巻〉長部経典2」によります。岩波文庫から出ている「ブッダ最後の旅-大パリニッバーナ経」も同様の内容ですので、ぜひとも手に取って頂ければと思います。
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