アメリカが、私たちとは異なる価値観で動く複雑な国家であることを実感する! 池上彰氏による解説本【そうだったのか!アメリカ】を読む。
私はアメリカが嫌いです。
私はアメリカが大好きです。
そんな矛盾した気持ちにどう折り合いをつければいいのか、
と考えながら池上彰氏は、本書「そうだったのか! アメリカ」を半年もかけて書き上げられました。
本書の最初の発刊は2005年10月です。2005年当時はまだ大統領がジョージ・W・ブッシュだったりします。
そしてその後発刊された、文庫本版、Kindle版には「オバマ以降のアメリカ」という章が追加されています。
まあ、とは言え本書は、建国以来のアメリカの特徴が浮き彫りにされることにより、歴史的経緯を踏まえたアメリカのことが分かりやすく書かれていると思います。
さて、皆様はアメリカについてどのようなイメージを持たれていますか?
アメリカとは?
・偏狭で自己中心的だ。
・豊かで刺激的だ。
・自由の国だ。
・偽善的で圧倒的な帝国だ。
・(アメリカ人は)世間知らずだ。
・(アメリカ人は)俗物だ。
・機会均等の国だ。
・(アメリカの)民主主義は独りよがりだ。
・将来の世界の姿だ。
・自国の利益しか眼中にない。
これは、アメリカ人ジャーナリストのマーク・ハーツガード氏の本「だからアメリカは嫌われる」の一節です。
いかがでしょうか?
結構厳しい意見が多いですけど、私たちの抱くイメージに近い一節もありませんか?全部ではないでしょうが、一部で同意できる点もあろうかと思います。
さて、上記池上氏の本でアメリカの特徴を概観すると、同じ資本主義・民主主義国家でありながら、日本とは全く違う建国経緯、基盤、仕組み、価値観で成り立った国であることをよ~く実感できます。
例えば、
政教分離されているとは言え、大統領の就任式には聖書に手を置いている・・・ どういうこと?と思ったりしますが・・・
アメリカの政教分離とは、政府が特定の宗教に便宜を図らないとか、特定の宗教活動を禁止しないことなのであって、「宗教からの自由を確立するため」ではなく、「宗教のための自由を確保するため」に国教が禁止されています。
元々、キリスト教徒によって作られたアメリカでは、キリスト教徒が政治に関わることは当たり前のことなのです。
キリスト教的な考え方、内容、規範が土台として根付いているけれど、そのうえで自由な信仰が可能なのです。
また、歴史的にみて、東部13国(州)で建国されたアメリカは、その後先住民族や他国と戦いながら西部に進出し、次々と自国にしていきました。
そのような歴史的経緯を踏まえると、身を守るために戦うこと(=武器(拳銃)を所持すること)が国民の権利として憲法で保障されている背景が分かります。賛成はしませんけど。
ちなみに本書にも掲載されているアメリカ国歌の歌詞を読むと、こんなにも自由のために勇気をもって「戦う」ことが謳われていることに驚かれると思います。
そして前項と少し関係しますが、
アメリカは東部の13国家(独立国家)が連合して成り立ち、その後拡張していった国です。
正式な国家名は、アメリカ(大陸の)連合国家です。
それゆえ、連邦の代表者(元首)である大統領や連邦機関の権力が強大になったり、各国家の主権を脅かすことを抑えるための「監視の仕組み(三権分立、ジャーナリズムなど)」も発展してきました。
自主独立の精神が旺盛な人々は、「権力は信用できない。権力は直ぐに人民を不当に抑圧しようとする」「国民の代表をしっかりと監視しよう」という意識がしっかりと働いているのです。
まあ、それでも最近、連邦政府、大統領などの権力が拡大していっているようなので・・・これだけの分権的な仕組みをもってしてもなかなかに難しいのでしょうね。。
こんな感じで、国の成り立ち、土台、価値観が全く違うけれど、同じような政治・経済体制を敷いているアメリカと日本では、お互いの行動などの理解がし難いことも発生し得るだろうなぁ、と感じます。
もちろん、この本を読むだけでアメリカを分かったとは言えませんけど、アメリカについて概観はできると思います。
歴史的経緯などを踏まえたアメリカの特徴についてしっかりと書かれているこの本は、内容が濃く、おすすめですよ!