「時は金なり」の意外な意味、意図についてご存知でしょうか。
ベンジャミン・フランクリンの「時は金なり」という言葉がありますね。
一般的にこの言葉は、どのように捉えられているのでしょうか?
それは。
例えば。
ビジネス的には「効率化することでより多く利益を出せる」という捉え方をされていますし、一般的には「かけがいの無い時間を大切にすべし」とか、「時間はお金と同様に貴重なものだから、決して無駄にしてはいけない」という倫理・道徳的な戒めとして捉えられています。
しかし、です。
「若き職人への助言」というタイトルの本で語られているこの言葉を、その後ろまでしっかりと読んでみると、異なった意味が見えてくるのです。
その部分を抜粋してみましょう。
「時は金なり」ということを忘れてはいけない。
1日の労働で10シリング儲けられるのに、外出したり、室内で怠けていて半日を過ごすとすれば、娯楽のためには、たとえ6ペンスしか支払っていないとしても、それを勘定に入れるだけではいけない。
ほんとうは、そのほかに5シリングのお金を支払っているか、むしろ捨てているのだ。
「信用は金なり」ということを忘れてはいけない。
だれかが支払い期日が過ぎてからもそのお金を私の手もとに残しておくとすれば、私はそのお金の利息を、あるいはその期間中にそれでできるものを彼から与えられたことになる。もし、大きい信用を十分に利用したとすれば、それは少なからぬ額に達するだろう。
「お金は繁殖し子を産むものなり」ということを忘れてはいけない。
お金はお金を生むことができ、またその生まれたお金は一層多くのお金を生むことができ、さらに次々に同じことがおこなわれる。5シリングを運用すると6シリングとなり、さらにそれを運用すると7シリング3ペンスとなり、そのようにしてついには100ポンドにもなる。
ちなみに、1971年以前は、以下のような単位だったようです。
・1ポンド=20シリング
・1シリング=12ペンス
実は、フランクリンがここで論じているのは、「貨幣の性格について」なのです。「お金がお金を呼ぶ」、「利子によるお金の繁殖」こそが、「時は金なり」の真意なのです。
まずは「時は金なり」について焦点を当ててみると、それは「機会費用・機会損失(=遊んでいる間も働いていれば、より多くのお金を儲けることができる)」的な話であり、「勤労の勧め」とも言えるものです。
そして、その「勤労に励んでお金を稼ぐこと」が、その後に続く「利子によるお金の繁殖」に繋がっていく、ということを言っているのです。
人生訓、道徳論のような内容ではなく、もっと生々しい内容、功利的な内容について書かれたものだった、と言えますね。
歴史的な言葉には、部分的に切り取られることで、時に違う意味として定着してしまう、という典型的な例だと思います。
私はこの事実を、「若き職人への助言」で知ったのではなく、先日ご紹介させて頂いた「遅刻の誕生」の中で書かれていたことで知りました。
ちなみに、Amazonでは「若き商人への手紙」というタイトルの本の「なか見!検索」で、その内容を見ることができますよ。Amazonのなか見検索では、上記よりくだけた表現で書かれていますが、内容は同じです。
繰り返しとなりますが、現在、普通に使われている箴言などの中にも、案外真意が伝わっていないものがあるのだなぁ、と思ったので、シェアさせて頂きました。