単なるテクニック論ではなく、「人を大切にする心」が重要だと気付かせてくれる ‐岡田尊司氏「人を動かす対話術」‐
【人を動かす】 【対話術】
本書のタイトルを読むと、単なるテクニック論を想像されるかもしれません・・
確かに、テクニック論も充実しています。
が、それ以上に「根底に流れる大切なこと」にも気づかせてくれる本「人を動かす対話術」は、精神科医の岡田尊司氏により執筆されました。
まずは「対話術」の面に焦点を当ててみましょう。
目次を見ると、本当に多くの対話(コミュニケーション)手法が紹介されています。
第一章:心を開くアプローチ:ロジャースの来談者中心療法
第二章:問題をスピーディーに解決するアプローチ:解決思考アプローチ
第三章:人を動かすアプローチ:動機付け面接法
第四章:受け止め方を変えるアプローチ:認知(行動)療法
第五章:自己否定を克服するアプローチ:弁証法的行動療法
第六章:不安定な愛着の人へのアプローチ:愛着不安/回避等の方に対し心掛ける
第七章:行動と環境に働きかけるアプローチ:言語的な対話で歯が立たない場合
そして、各問題と関連の深い対話技法として次の場合がある、と紹介されています。
進路・就職の悩み、結婚・離婚の悩み、決断できない・自己否定、無気力、ひきこもり、対人関係、職場の問題、子どもの問題行動・・・
さて。
このうちの、第一章にあるカール・ロジャースの来談者中心療法的なカウンセリングについては、私自身、産業カウンセラーの講座で訓練を積んだことがあります。
このカウンセリング法は、受容と共感を元にした優れた技法です。
この技法、というか、この技法の理念である「受容」と「共感」そして「傾聴」という心構えは、この訓練内だけでなく、以前勤めていた会社において、特に部下となるメンバーと対話・面談するときに大切で重要なことであると実感されました。また、現在、ヘミシンク・トレーナーとしてセミナーを開催させて頂く際も、大切なことであると実感し続けています。
そのような優れた技法である来談者中心療法的なカウンセリングですが、様々なシチュエーション、短期的に解決策を導かなければならない場面があり、その他の方法を駆使する必要があることも確かです。
岡田氏は言われます。
心理臨床、教育支援、ビジネスの場などでもっとも有効な対応をするためには、多くの引き出しの中から、必要とされる方法を選び出し、使い分けることが求められる。
確かにその通りだと思います。
ここまでご紹介させて頂いたように、この本は各種対話法についての記述が充実しています。
けれども。
読み進むうちに、単なるテクニック論に留まらず、根底に流れる大切なことに気付かせて頂けます。
これら優れた対話法に共通する大切なことこそ、岡田氏が言いたいことだと思います。
それは。
・人を大切にする心
・その人に元来眠っている力を引き出そうとする姿勢
です。完全に共感します。
本書の中で何度も強調されている、「人を大切にする、人に元来眠っている力を引き出す」という姿勢、「共感・統合」といった面こそ岡田氏が言いたかったことであり、大切なことだと思います。
このことこそ、すべてのカウンセリングに共通する基本であり、根底に流れるものです。私自身も、産業カウンセラー講座や会社での実務で強く強く実感しています。
いろいろと参考になる本ではないでしょうか。