広大な裾野を持つ、発展途上の【宗教学】を俯瞰し深めるためのガイド本、下薗氏の「宗教学の名著30」のご紹介です。

 

宗教学の名著30を執筆された島薗進氏曰く、「宗教学とは発展途上の学であり、その土台が固まり切っていない」のだそうです。

とは言え、宗教学は、「宗教を人間の事柄として広く考察することにより、奥深い人間理解に到達することを目指す」、有用な学問だとも下薗氏は言われます。

 

私の場合は、「一体、人間は何を軸、拠り所として生き得るのか?」との問いについて考察するための1つの手段として宗教学を学んでいます。

ちなみに、社会学、経済学、心理学、哲学などの領域を学ぶことも、私にとって、上記の問いへの考察手段となっています。

宗教学を学ぶことが優先次候補というわけではなく、それらは等置されます。

また、1つの宗教に身を置く(所属する)のでもなく、すべての教義を相対化し俯瞰する立場にいます。

 

さて、この宗教学の名著30は、30冊の解説を通じて、「宗教学のアウトラインを知る」こと、「各書の概要を知る」うえで、たいへんに参考になる書籍ではないかと思い、ご紹介することとしました

本書は300ページ弱の新書ですが、その分量以上に、とても濃い内容です。

 

さて、ここではやはり、各章の標題と概略を列記するのが、内容を示しやすいかと思います。

Ⅰ章から示すと。

Ⅰ章「宗教学の先駆け」

8~18世紀までの突出した知性による宗教論が4冊取り上げられています。18世紀後半のヒュームが、近代宗教学の先駆けになっていたりします。

Ⅱ章「彼岸の知から此岸の知へ」

いわゆる形而上学的世界が瓦解し、近代宗教学が成立する過程について語られた4冊が取り上げられています。カント、シュライエルマッハ、ニーチェなどです。

Ⅲ章「近代の危機と道徳の源泉」

19世紀末から20世紀初めにかけての「近代の危機」の時代の社会秩序と宗教のかかわりについて考察された4冊が取り上げられています。デュルケム、ヴェーバーのような社会学的な視点や、フロイトの心理学的な視点などです。

Ⅳ章「宗教経験と自己の再定位」、Ⅴ章「宗教的なものの広がり」、Ⅵ章「生の形としての宗教」

お互い大いに関係があり、明確に区分し切れないそうなのですが、強いて言えば、Ⅳ章は宗教心理学的なアプローチ(ジェイムズなど)で、Ⅴ・Ⅵ章は歴史学・文化人類学・社会学的な要素があります。柳田国男氏、井筒俊彦氏などの日本人が取り上げられています。

Ⅶ章「ニヒリズムを超えて」

著者曰く、野心的な思想家の宗教理解を取り上げているそうです。ヤスパース、バタイユ、湯浅泰雄氏などです。

 

個人的には、どれも興味深い中、とくにⅦ章の「ニヒリズムを超えて」章が、現代社会ともリンクできるテーマであり、もっと深く学んでみたいジャンルです。

 

さて冒頭で、宗教学は土台が固まり切っていない発展途上の学である、と書かせて頂きましたが、考えてみれば、社会学、心理学でも、取り上げる人によっては、恐らく枠組みや土台となるものが異なることがあるように、まだまだ様相を変えつつあるようにも思えます。

変化の激しい現代を対象としているのだから、それは当たり前だと思いますね。

以上です。

宗教学に興味をお持ちの方は、本書宗教学の名著30を紐解いてみられるのはいかがでしょうか?

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