岡田尊司医師の【インターネット・ゲーム依存症】にはショッキングな状況が書かれています。社会的な問題として対応が必要ですね。
今、世界的にインターネット・ゲームが流行っています。
と同時に、「インターネット・ゲーム依存症」も大きな問題となっていっています。
今回ご紹介する岡田尊司医師の本「インターネット・ゲーム依存症 ネトゲからスマホまで」では、まず、2012年中国科学院大学のショッキングな研究結果から始まります。
インターネット依存(主に、インターネット・ゲーム依存)の若者18名と、そうでない若者17名を、DTIという画像解析ツールで脳の状態を調べてみた結果、インターネット依存の若者には、大脳皮質で神経ネットワークの走行の乱れの増加が認められた、とのことなのです。
無気力、無関心で、何ごとにも投げやりな、人格の荒廃した状態に陥る危険があるのです。
さらには2013年、アメリカ精神医学会DSM-5で「インターネット・ゲーム障害」が 「今後の研究のための病態」として記載されたり、中国・韓国では国家ぐるみで規制の導入、依存治療の教育キャンプ(こちらは中国で)を設ける、などの対応を行っているのです。
比べて日本では、依存症の人が大勢いるのも関わらず、対応が遅れているということなのです(ただし、本書刊行は2014年なので、最新の状況は不明です。とは言え、それほど対応が進んでいないと思われます)。
本依存症が恐ろしいのは、インターネットという身の周りに溢れたツールを使っているうちに依存症に陥ってしまう可能性がある、すなわち誰にでも可能性があるということです。
今や国民の多くがパソコン、スマホを所持し、ゲームやSNSを手軽に楽しむ時代です。
例えば、学校や社会で何か凹むようなことがあったら、それをきっかけにゲームにのめり込む、などの可能性もあるわけです。
そして、このインターネットは、私たちの脳の報酬系と言われる領域を刺激するため、私たちは歓びや快を求めて、特に用がないときの暇つぶしも含めて、本能的に何度も何度も繰り返して使用するようになるのです。
そして使い続けるうちに、脳のしくみ(ダウン・レギュレーションという調整のしくみ)により、同じ刺激では同じくらいの満足を得られなくなり、さらに長時間、強い刺激を求めるようになっていく、ついには、楽しみというより、やらないと落ち着かないという状況になっていくのです。
さて、このような危険なインターネット・ゲーム依存症(ゲームに限らず、スマホ中毒なども同等の危険性があると思います)にどう対応するのか?
一番大切なのは「予防」ではないでしょうか?
人間の快・歓びという本能的できわめて強力な刺激を受けるので、依存症が進めば進むほど、治すのが大変になっていきますので。
予防法としては、やはり家庭で低年齢からさせない、すなわち開始年齢を遅らせることが一番大切です。
なぜならば、低年齢から始めれば始めるほど、深く依存するようになるからです。
具体的には、学習のためのインターネット利用以外はさせない/制限することです。
親御さんが依存症の怖さをしっかりと理解し、しっかりとコントロールすることが大切なのです。
そして。
こちらは、国が主導するのが良いのでしょうね、かつての喫煙への対応がそうだったように、社会的に危険性について学習し、周知し、社会的な共通認識を育てていくことが大切だと思います。
また、岡田尊司さんの一貫した主張である「家庭を安全基地として機能する場」として整えることも大切です。
これ以外にもいろいろな対処法が書かれていますが、それは本書で確認するのが良いかと思います。
さて、最後に。
本書を読ませて頂いて思ったのが。。。
スマホなどによるインターネット利用自体は、「気晴らし・切りかえ」などの用途でも大いに役立っているので、全ての世代に一概に「使うな」というのは難しいなぁ、ということです。「気晴らし」と「依存症」の境界がなかなかに難しいということですね。
例えば、「スマホがないと落ち着かない」人の話をよく聞きますが、そういった人たちが生活に支障をきたすほどの依存症かと言うと、全ての人がそうだとは限りませんし・・・
でも、そんな人々が前述のとおり、凹むような出来事に遭い、ずっと家に引きこもるようなことがあれば、依存症まで進みそうな気もしますし・・・
う~ん、最終的な結論はちょっと曖昧になりますが、
バランスを崩すほど使い過ぎてしまい生活や健康を損ねる、といった人が百万人単位でいるということなので、まずは家庭での使用制限や社会での危険性周知についてしっかりと行なっていくのが良いと思いました。
本書「インターネット・ゲーム依存症 ネトゲからスマホまで」を一読されてみるのはいかがでしょうか?