アーノルド・ミンデルのプロセスワークで達し得る〔深い世界〕について語られる!【昏睡状態の人と対話する】
アーノルド・ミンデルによる【昏睡状態の人と対話する―プロセス指向心理学の新たな試み】。
なかなかに衝撃的な本ですね。
まずは、昏睡状態とは?
重い意識障害の状態のことです(様々な条件がありますが省略)。
本書では主に、昏睡状態のうちでも、死に瀕する状態の人々と対話することで、そこに秘められた意味を明らかにしようという・・・
心理療法を用いて、ほとんどスピリチュアルな領域まで踏み込んだ、とても興味深い取組みです。
ではどうやって、そのような状態とコンタクトを取っているのか?ということですが、スタイル的には一般的な心理療法に近いです。共感・対話をする、という意味でです。深さが違いますが、形式的に近い、という意味です。
コンタクトは、クライアント(患者といってよいと思います)の状態を注意深く観察するところから始まります。
クライアントと呼吸を合わせ、死に行くという孤独な状態にあるクライアントに「一緒にいる」ことをしっかりと伝える(=囁きかける)。そして、クライアントの微かな合図に気づき、それをキーに対話を図って行く、といった手法を取ります。
とは言いながらも、極めて微細な感性・根気などが必要だな、ということが、本書を読んでいてヒシヒシと伝わってきます。長い場合、数時間に及びますし。
十二分にワークスキルや感性を磨いた上でないと、なかなかできないことだと感じます。そして、そこまでしてもうまくコンタクトできなかった事例も結構あるはずだ、とも思います。
さて、このようなコンタクトを通じて、外見上何も動きの無いような「昏睡状態」のクライアントが、実は内面で(変性意識状態で)驚くほどの様々な体験をしていることが、本書内で何例も語られています。
具体的な例は、本書を読まれるのが良いかと思いますが、、、
総じて言うと、個々人の状況に応じて「より全体的な自分になるためのプロセス」を体験していることがある、ということなのです。
このような現実に接したミンデルは、身体を、リアルボディ以外に、ドリームボディ(夢の身体)、ミスボディ(神話的身体)、イモータルボディ(永遠の身体)といったいくつかのスペクトルに分かれたものではないかと仮定し、
そして昏睡という変性意識状態では、ミスボディ、イモータルボディ的な体験をしているのではないか、と主張されています。
う~ん、ほとんどインド哲学的な世界ですね。ヘミシンクの世界観とも通じるものがあります。
本書を読むことで、リアルボディ(肉体意識)だけを観察しているだけでは分からない世界の存在を、「心理学という現代的なアプローチにより示唆できている」という点に深い感銘を覚えます。
こういった事例に関し、単なる個人の脳内現象だ、と切り捨てることなく、
(プロセスワークに限らず、)もっともっと事例を集積させていき、純科学的とは言わないまでも、準科学的なアプローチとして、観察可能な単なる肉体(リアルボディ)を超えた世界の研究が進んで行くと良いですね。
ご興味を持たれた方は、ぜひ「昏睡状態の人と対話する―プロセス指向心理学の新たな試み」を手に取って見てください!
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