日々、地に足をつけて生活することの大切さも語る! 小林よしのり氏の【修身論】
小林よしのり氏といえば、「ゴーマニズム宣言」系の数多くの漫画を出版されていますよね。
小林氏の漫画のなかで、政治系のものについては、私自身の知識が乏しすぎることもあり、ほとんど読んでいないので、ここで書くことはできませんが・・・
氏は、私が関心を持っている社会学・心理学につながるような漫画を幾冊も出されています。
その一つが、今回ご紹介する「ゴーマニズム宣言PREMIUM 修身論」です。
この本って、タイトルこそ「修身論」となっていますけど、これまで氏が連載されていた漫画のうち、比較的テーマが近いものを集め、加筆・訂正、解説文を加えた(漫画+文章です)ものであり、広いテーマが扱われています。
例えば、(純愛ブームを受けて)恋愛・結婚について、自由・平等な家族について、平凡について、教育・いじめ・孤独・生命についてなど、現代社会のトピックスを元に、多分に社会学・哲学・倫理学・道徳的な考察がされているなぁ、と思います。
いわば、「現代社会論」ですね。
さて、この本の中には共感しにくい箇所もあるのですが・・・それはともかく。。。
ここでは、共感を覚えたことばをシェアさせて頂きます(一部、文章をまとめたり、省略しています)。
自由でいいじゃ~ん、と言いながら「自分探し」に走る現代人。
身の修めどころを知らぬ現代人。
家族を愛し、地域の公共に目を配り、会社への忠誠心を持って働き、マスコミの世論誘導に惑わされず生活者としての目線を失わない (中略) そんな安定した人物は、今どきいないのかも知れない。
氏は、現代の教育と結びつけ、現代社会においては「平凡」への感謝の念が抜けている、と言われます。
大いに共感します。
もちろん、個別の才能を発揮し活躍することは素晴らしいことです。教育現場でも、大いに個性を発揮できるような教育をすべきだと思います。
と同時に、
しっかりと地に足を踏みしめて、平凡に日々を送ることも、大いに素晴らしいことです。
何とか衣食住がそろって、日々生きていることってすごいことですし、自然に感謝の念が湧いてきませんか?
あまりにも「特別」「個性」「オンリーワン」を絶対化し過ぎていることに違和感を覚えます。
要するに、バランスが崩れて極端化しているのです。
そして、「他との比較」で「相対的に優位なもの」が価値あるものとされていることに違和感を覚えます。「他者との比較優位」を価値化して特別なものとしてしまうくらいならば、穏やかで平凡であって良いと思います。
多分、そのような平凡な日常を軽視する姿勢こそが、伝統的な共同体を壊し、極端な個人主義に向かわせ、この本のタイトルにもなっている「修身」や「道徳」というものの軽視につながっている一因ではないでしょうか。
まあ、私自身、昔から伝統的共同体の同調圧力に辟易としていた方なので、向かうべきは、伝統的共同体の復興などではなく、「適度な公共性を育める共同体+個を生かせる共同体」という、統合的な共同体が求められているのだろうと思います。
本書内で氏は「生産協働体(消費することでつながるのではなく、生産のために協業するつながり)」の可能性について言及されていますが、まさにそのような協働体って、統合的な共同体の一つの姿だろうと思います。
また、もう少し話を飛躍させると・・・必ずしも共同体でなくとも、安定した個・社会を作れる可能性があって良いのではないかとも思います。
今、あまりにも「人と人とのつながりを取り戻せ」と言われているので・・・生産協働体のようなつながりを作ることの他に、「人と人とのつながりを超えた解」があっても良いように感じます。
さて、本書中のことばに戻ります。
世の中を少し戻そう。
進歩主義というものを少し見直そう。
ここでは、便利な一方で、いつでもどこでも私たちを縛りつけるケータイ(スマホ)や24時間営業のお店などが実例として挙げられています。
忙し過ぎる生活を見直し、少々の無駄を受け入れ、ゆとりを持つことって大切だなぁと思いますね。
さらに。
プライドには「誇り」と「自己愛」がある。
誇りは人間には必要だけれど、現場や共同体というものから完全に離れてしまうと「自己愛」だけが肯定されて、自意識ばかりどんどん肥大していくような人間が出来上がる。
特に思春期のころは、何度も何度も自意識が肥大するけど、何度も何度もぶち壊されるという過程をたどらなければならない。
ここでは、元体験として「現実感をしっかり身につけること」の大切さを述べられていますね。
思春期に限らず、いつだって地に足をつけた生活って大切だと思います。
大いに共感します。
さて、今回は、いささかまとまりを欠いたブログになった気がしますので、まとめます。
氏曰く、現代とは
・共同体が消滅し、道徳観を身につける機会が失われ、個が暴走する時代。
・個人は、オンリーワンを目指し、本当の自分を探そうとしている。
処方箋として、
・生産協働体などの共同体を作る。
・地に足をつけた生活(≒平凡)を再評価する。
・現代にあった「修身」を作る。
といった点が書かれています。
個人的には、前述のとおり、共同体については、もっとバリエーションがあって然りだと思いますし、
国家で「修身」を作るといろいろと問題が出そうなので、もっと基本となる「大原則」のようなものがあれば良いのかな、と思いますが・・・
「ゴーマニズム宣言PREMIUM 修身論」、大いに参考になる本でした。