家入一真さんの「さよならインターネット」を読み、再び【閉じた世界】が構築されつつあることを実感したお話。
ネット業界で有名人であり、都知事選出馬などでも有名になった家入一真さんが書かれた「さよならインターネット」。
今日のネット社会についての興味深い考察が多々書かれていましたので、ご紹介します。
家入さんは1978年生まれなので40歳手前で、インターネットの発展とともに歩んで来られた世代の方です。あのレンタルサーバーサービス「ロリポップ!」も家入さんが立ち上げられた事業なのです。
本書は、タイトルにも関わる興味深いエピソードから始まります。
それは。
家入さんの会社でインターンシップをしている20歳の学生に、家入さんが言われたひと言です。
家入さんは「インターネットが大好き」とよく言うけれど、ぼくにはその意味がわからないんです。
なんだか「ハサミが大好き」って言っているみたいで。
どういう意味でしょう?
それは。
要するに、その学生さんにとってインターネットは単なる「道具」に過ぎない。特別なものではなく、ふつうの生活の基盤(インフラ)なのだということです。
10代に引きこもりであった家入さんにとってインターネットとは、自身の世界を開いてくれた救世主のような存在であり、また家入さんには「リアル(現実)」の世界と「ネット(仮想)」の世界の区別があり、その2つは繋げるべきもの、というような感覚があるのです。
そりゃあそうですね。私もインターネットの発展とともに生きてきましたが、圧倒的にリアルの世界に軸足があって、ネットは「リアルを補助、もしくは促進してくれるもの」というイメージがあります。インターネットが生活の中に溶け込んでいるというよりは、一線を画しているという感覚がどこかであります。
インターネットというインフラを意識することなく、もっと言えばリアルとネットの区別を意識することなく、ふつうに生活の中の道具として活用していく世代に対してジェネレーションギャップを感じたのだと思います。
分かるような気がします。
さらに家入さんは、現代のネット社会について鋭い洞察をされています。
それは、フラット化を目指したインターネットが進展するに連れて、今度はレイヤー(層)化する、すなわち膨大な数の閉じた世界、お互いに行き来のない世界ができていくという視点です。
特にSNSの進展により目にするのは、グループとなった人たちとのやり取りに終始する世界です。SNS以外でも案外、ブックマークした特定サイトとか特定アプリのみ閲覧してしまい、新しいジャンルの情報を閲覧することって少ないんじゃないでしょうか。
ひと昔前、ネットサーフィンという、新しい情報に触れるために次々と新しいホームページを巡回するようなことが流行っていましたけど、こんなことも少なくなっているような気がします。これってもしかしたら、私と私の身の回りの人だけの話なのですかね。。。
私自身、パソコン、スマホを使っていて、マンネリ気味に同じような情報ばかりを見ているなぁ、と感じています。
家入さんはこのことを「偶然が無くなった」と表現されていますね。
無駄なく効率よく、というネット社会の性質を踏まえると、このような方向に向かう傾向があると思います。
また、新しい情報に触れることなく、閉じた社会に閉じこもってしまう理由の一つとして、「人間は認知を節約したい」、要するに「人間は横着したいものである」という点があると思います。心理学でさんざん言われているように、人間とは、手間をかけずに、できるだけ頭を使わずに物事を知りたい動物(人間だけではなく、動物全体)なのです。
あまりに情報過多のため、一度安住したところや、世間で流行っているところに落ち着いていたい、という面があるのだろうと思います。
さらには、インターネット発展期に、思わぬ人にまで拡散することで炎上してしまった時代を経て、今度はクローズドな環境が選ばれるようになったようにも思えます。
インターネットの世界は、驚くほど移り変わりが早いです。Facebook, twitter, LINEなんて、ほんの数年前には無かったけれど、あっという間に広がりました。数年後はどうなるかわかりませんし・・・
今後も変化し続けるのだろうと思います。興味深いですね。
家入さんは今、閉じてきたインターネットの世界から、インターネット・リアルに関わらず、新しいプラットフォームを作る方向へ軸足を移しつつあります。今後、具体的にどのような世界を広げられていくのか楽しみですね。
さて、ひととおり書いてみて・・・今回はインターネットの負の側面に焦点を当てすぎたかな、という気がします。
当然ながらインターネットの進展により、膨大なビジネスが生まれたのも確かです。
その中で、家入さんの言及された点とか、セキュリティ、プライバシーなどの問題や状況が生まれています。多分ずっと過渡期なのだと思います。
今後もどんどん変化し続けるのでしょうから、その動向を、時に体験しながら、時に適度な距離をもってウォッチしていきたいなぁ、などと思います。