経営などにも役に立つ!不思議な不思議な「選択」のお話です -選択の科学-
私たちは、1日のうちに数え切れない程の「選択」を行っています。
けれども、何を基準に、何で選択を行っているのかは、案外分かっていない。。
本書「選択の科学」では、「選択」という、分かっているようで分かっていない行為について取り組んだ、たいへんに示唆に富んだ、具体例に溢れた好著です。
著者のシーナ・アイエンガー教授は、社会心理学を専攻されています。そして現在、ビジネススクールに所属されています。
教授曰く、ビジネススクールというのは、学際的研究に向いたところであるということで、
なるほどこの本も、心理学(特に認知心理学)がベースとなりながらも、経営学的ですし、経済学、社会学、医学、生物学、比較文化学などにもまたがった多彩な視点で書かれています。
さて、
私たちは一般に、選択肢が多ければ多いほど良いと思っていますよね。
だから、選択肢は常に豊富であってほしい。
選択肢がない=不自由。
そう思いますよね。
ところが、
選択肢が多すぎることで、私たちは選択をしない/できないことがあるのです。
教授の研究の中には、有名な「ジャム実験」というものがあります。
この研究(実験)により、あるスーパー内の試食品サンプルが多すぎると、試食に立ち寄る人が多いとは言え、実際に売り場に行って購入する人が少なくなってしまうことが明らかになったのです。
6種類だけ並べた試食コーナーに立ち寄った人の方が、24種類ある試食コーナーに立ち寄った人より、6倍以上、実際にジャムを購入したのです!
24種もの試食品を見た人の多くは、選択に迷った末、結局は買わないという選択をしたのです。
意外ですよね。
もっとも、人間の心理とは、結構複雑です。
CDとか本など、他とはっきり区別がつくような商品は、選択肢が多くても大丈夫なようです。ある程度まででしょうけど。
選択肢の見分けが容易につかないとか、同じ用途の商品の中から1つ選ぶような場合、選択肢が多くない方が良いのです。
多くのものから選択するという行為自体がストレスのある行為であり、本質的に資源を節約したい(労力をかけたくない)私たちは、選択自体を放棄してしまうのです。
よって、経営の世界では、品揃えをある程度絞るという戦略があり得るのです。
本書には、この他にも極めて多くの例があるのですが、今回はこれだけとしておきましょう。
一筋縄ではいかない選択という行為を、様々な実験・研究から紐解いていってくれる「選択の科学」は、心理学に興味のある方はもちろん、経営学に興味を持たれている方、会社員の方などにも役立つと思います。