脳をうまく使う「脳にとっての良い習慣」が具体的にわかる! -築山節医師「脳が冴える15の習慣」-
前回の記事では、脳神経外科医である築山節氏による「フリーズする脳―思考が止まる、言葉に詰まる」についてご紹介させて頂きました。
その、「フリーズする脳」は、どちらかというと、脳機能を衰えさせたり、脳をうまく使えなくなっているという状況の原因究明に焦点をあてて執筆されています。
これに対し、今回ご紹介する「脳が冴える15の習慣―記憶・集中・思考力を高める」では、脳の機能を取り戻し、脳をうまく使う「脳にとっての良い習慣」について具体的に書かれています。
この本は、脳神経科学の視点も踏まえながら、実際の臨床の現場での経験を元にした対処法(習慣)について書かれたということで、その内容には一定の説得力があります。
私自身の生活習慣を振り返ってみて、なるほど、と思い当たる点が幾つかありました。
まず、全体を俯瞰するため、Amazonの目次にある15の習慣について掲示してみます。
1.生活の原点をつくる―脳を活性化させる朝の過ごし方。足・手・口をよく動かそう
2.集中力を高める―生活のどこかに「試験を受けている状態」を持とう
3.睡眠の意義―夜は情報を蓄える時間。睡眠中の「整理力」を利用しよう
4.脳の持続力を高める―家事こそ「脳トレ」。雑用を積極的にこなそう
5.問題解決能力を高める―自分を動かす「ルール」と「行動予定表」をつくろう
6.思考の整理―忙しいときほど「机の片付け」を優先させよう
7.注意力を高める―意識して目をよく動かそう。耳から情報を取ろう
8.記憶力を高める―「報告書」「まとめ」「ブログ」を積極的に書こう
9.話す力を高める―メモや写真などを手がかりにして、長い話を組み立てよう
10.表現を豊かにする―「たとえ話」を混ぜながら、相手の身になって話そう
11.脳を健康に保つ食事―脳のためにも、適度な運動と「腹八分目」を心がけよう
12.脳の健康診断―定期的に画像検査を受け、脳の状態をチェックしよう
13.脳の自己管理―「失敗ノート」を書こう。自分の批判者を大切にしよう
14.創造力を高める―ひらめきは「余計なこと」の中にある。活動をマルチにしよう
15.意欲を高める―人を好意的に評価しよう。時にはダメな自分を見せよう
番外編:高次脳機能ドックの検査―最低限の脳機能を衰えさせていないか確認しよう
15の習慣は、それぞれ、「脳の活動を安定させ集中力・頭の回転を高める」「思考系の中枢である前頭葉を鍛え、その力を発揮しやすい環境を整える」「情報のインプット・アウトプット、つまり記憶力・コミュニケーション力を高める」「医学的な意味で、臓器として脳を健康に保つ」ための有用な習慣になっています。多岐にわたる網羅的なものですね。
このような感じでバラエティに富んでいますが、この中で印象に残った項目について、少しだけ書かせて頂きます。
例えば。
「集中力を高める=生活のどこかに「試験を受けている状態を持つ」」とか、「問題解決能力を高める=自分を動かす「ルール」と「行動予定表をつくる」」などの項目があります。
本書を読み進める中で、このような章に突きあたり、「忙しくて情報が溢れる中、それを乗り越え、超能率的、超効率的に生きることを推奨されているのかな、よくある仕事の効率化・合理化を主張する本だろうか」と思え、正直なところ、私には合わないかな、と感じました。
ところが、です。
スローな環境、ゆとりある環境を愛して止まない私ですが、ダラダラ・ボーっと1日を過ごすと、何か頭がスッキリしない感覚はありました。
書かれているような緊張感まで持つ必要はない、と考えますが、やろうとすることに対し、ほのかな目標くらいは持って過ごした方がスッキリと過ごせると実感します。
また、私のような自営業者は、どこかで切りをつけておかないと仕事の際限がなくなったり、逆になかなか手に付かなかったりと、生活リズムを乱す(=これも脳のためには望ましくないことです)ことがあり得ます。
バランスや程度の問題はあれども、脳のためにも仕事のためにも生活のためにも一理あると、考えが改まりました。
次に。
「脳の持続力を高める=家事、雑用(片づけ)を積極的にこなす、面倒くささに耐え、毎日自分を小さく律する」という項目も印象的でした。
著者曰く、このことで司令塔である前頭葉を積極的に鍛えることになり、選択・判断・系列化ができるようになる、ということなのですが、確かにそうだろうな、と思えます。
私自身は、元々できるだけ1つのことに長時間集中したい性質で、何かに集中している時は雑事をやりたくない方です。
ただ、1つのことに集中することは充実感があるのですが、一方でやるべき雑事が後回しになる、なかなか実行に踏み切れない、結果として雑事がたまっていくということもよくありました。何となく頭の片隅に雑事のことが思い出され、スッキリしない状況もありました。
時間を決めて雑用をこなすことで、頭スッキリと生活できるという面は、確かにあると思います。
私の場合、この本で書かれた提案により、怠惰、もしくは一点集中に陥り勝ちな点を軌道修正してくれたように思えます。
この本では、「生活の原点(リズム)をつくる」など、一見当たり前のことも含めて、日常生活の習慣を整えていくことが肝要なことを教えてくれます。
15の習慣のうち、ご自身で腑に落ちることは、ぜひ取り入れて見られるのが良いのかな、と思います。