現代日本が失いつつあるものを思い起こさせる【言葉】が印象的な「田中角栄100の言葉」
勤労の精神、義理人情、信
など、現代の日本から失われつつある、軽視されつつある言葉等が綴られた本。
「田中角栄 100の言葉 ~日本人に贈る人生と仕事の心得」は、そのタイトルのとおり、田中角栄氏が遺した100の言葉が収められています。
1ページ目に角栄氏の言葉、もう1ページに角栄氏の写真と解説、という構成になっているので、自身の気になった言葉から拾い読みするのも良いでしょうし、全体を読み通すにもそれ程の時間を要さないかと思います。
それぞれが印象に残る言葉ですが、その中から特に印象に残った言葉を幾つか抜粋させて頂きます。
「勤労」ということを知らないで育った人は不幸だと思います。本当に勤労をしながら育った人は、人生に対する思いやりもあるし、人生を素直に見つめる目もできてくるわけであります。
世の中は白と黒ばかりではない。敵と味方ばかりでもない。その間にある中間地帯、グレーゾーンが一番広い。真理は常に「中間」にある。
相手が立てなくなるまでやっつければ、敵方の遺恨は去らない。徹底的に論破してしまっては相手が救われない。土俵際に追い詰めるが、土俵の外に押し出す必要はない。
このくらいにしておきます。これ以上は、購入・貸借されるなどして読まれるのがよろしいでしょうね。
全体を読んでみての印象は、次の通りです。
・徹底した現実家。人々が飯を食える=生活できることを重視、信条とした政治家ですね。戦前戦後という時代背景が色濃く反映された信条だと思いますが、角栄氏がよく口にした「おい、メシ食ったか!」という言葉は象徴的で印象的です。
・改めて書かせて頂きます。その言葉からは、古いと言われるかもしれませんが、勤労の精神、義理人情、信頼など、現代日本から失われつつある価値観を改めて思い起こさせます。
・意外にも、というと失礼ですが、事前の準備をしっかりと行う(=相手を良く知る)、バランス感覚を重視する(=敵を追い詰めない、取り込む)、という、仏教の中庸の心、または孫子の兵法を思い起こさせるような言葉も結構あり、印象的です。
現実家、義理人情に加え、このようなバランス感覚に優れた点が、角栄氏の大きな特徴であり、政治家として大成した大きな原因ではないかと感じました。
中には、角栄氏の金権的な価値観を思い起こすような言葉もあり、すべてを鵜呑みにする必要はないけれども、大いに参考にできる点がある本だと思います。