自分自身の「安全基地を持つ」という大切なこと ‐岡田尊司氏の「愛着障害」‐
人間が幸福に生きていくうえでもっとも大切だ、と冒頭で岡田尊司氏が断言されているもの。
それは。
愛着です。
人と人との絆を結ぶ能力であり、人格のもっとも土台の部分を形造っている「愛着」がバランスよく満たされず、多くの精神的なトラブルが起きている。愛着の安定性や様式は、対人関係のスタイルや親密さの求め方だけでなく、その人の生き方や関心、健康にまで関わっている・・・
この本「愛着障害 子ども時代を引きずる人々」は、精神科医である岡田尊司氏が種々の本の中で一貫して主張されている「愛着の大切さ」をテーマに書かれています。
最初に岡田氏の本を一冊読むならば、この本が一番良いように思います。そのうえで、今までに紹介させて頂いた本や、ズバリ病名がタイトルとなった本に進んでいかれると、岡田氏の主張がより明確に分かるのではないでしょうか。
この本の前半では「愛着障害」の特徴、スタイル、要因などが、多くの著名人などの具体例によって網羅的に語られています。
歴史上の著名人の「人となり」は直接確かめようがなく、伝記などで確認されているはずなので、その点は若干微妙だとは思います・・・ が、取り上げられている著名人のうち、かなりの割合を占めている作家の方々の創造性の原動力の一つが、愛着に対する葛藤のエネルギーであることは興味深く思いました。
そして、この本の後半では「愛着障害の克服」についてのかなり具体的な対処の方向性が述べられています。
詳しくはこの本を手に取って頂くべきですが、一つだけご紹介すると、「安全基地を持つ」という素晴らしい概念があります。
安全基地。
それは、いざという時に頼ることができ、守ってもらえる居場所、安心の拠り所、心の支えといった存在を持つということです。
多くの場合、それは、自身の身近な存在(家族、友人、恋人など)ですが、教師、カウンセラー、時には本であったり、宗教指導者のような存在が安全基地でもあり得ます。
このように大切な「安全基地」が、現代社会において脅かされてきています。
この辺りは、岡田氏も「おわりに」で書かれているように、合理主義や効率主義に代表される現代社会の考え方に反するものとして「愛着」を軽視してきた結果であり、現代社会の構造、価値観にも絡む根の深い問題です。
最後に、この本の巻末には「愛着スタイル診断テスト」があります。
このテストに回答することで、安定型、不安型、回避型などの「傾向性」がスコアとして判定されます。単に「○○型」というような2値的な情報(=単純な有/無)を与えるのではなく、点数に応じて傾向の強さの目安を与えている点は良いな、と思いました。
さらに言うと、人は、自分自身について必ずしもよく理解できているとは言えません。自身のことを自身で答えるのだから、正確でない点もあるでしょう。あくまで「目安」程度に考えることも大切だな、とも思います。
以上、この本の一部のご紹介となりますが、皆様のご参考となれば幸いです。
☆【心理学】関連(=全般)の記事も書かせて頂いています。
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