藻谷浩介さんの「デフレの正体」は、「里山資本主義」などで補完して読むと良いですよ!
よーく考えたら、藻谷浩介氏のベストセラー作
「デフレの正体」のご紹介をしたことがありませんでした。
「デフレの正体」の主旨は何なのでしょう。
それは。
経済を動かしているのは「生産年齢人口=現役世代数の増減だ」
ということです。
この度の講演会での主張と同様です。
現在、生産年齢人口が減っており、結果として個人消費量の減少にもつながる。
モノが売れず企業業績も悪化して、さらに勤労者(=生産年齢の方)の
所得が減っていき個人消費が減る、という悪循環にもなるのです。
そしてこのことを検証するために、
公開されている情報等を元に丁寧な説明が繰り返された後、
日本経済が目標とすること、その処方箋についても提言されています。
さて、この「デフレの正体」ですが、
Amazonの書評では結構厳しい評価もあります。
その主張は、主に次のようなところでしょうか。
・藻谷氏は、デフレの意味を取り違えている。
・人口が減っても経済成長する国はある。
まあ確かに、「デフレの正体」では少し説明不足の部分もあるようなので、
これらの指摘は分からなくはないですが・・・
実は藻谷氏は、後に続く本「里山資本主義」や「金融緩和の罠」などで
補足的・付加的な説明もされています。
例えば「里山資本主義」では、「デフレ」について次のように補足されています。
日本で「デフレ」といわれているものの正体は、
不動産、車、家電、安価な食品など、主たる顧客層が
減りゆく現役世代であるような商品の供給過剰を、
機械化され自動化されたシステムによる低価格大量生産に
慣れきった企業が止められないことによって生じた
「ミクロ経済学上の値崩れ」である。従ってこれは、
日本経済そのものの衰退ではなく、過剰供給をやめない
一部企業と、不幸にもそこに依存する下請け企業群や
勤労者の苦境である。
要するに、「デフレ」ではなく、いわゆる「デフレと言われているもの」
=「ミクロ経済学上の値崩れ」のことを論じたのだ、と補足されています。
さらには、「金融緩和の罠」で「人口減でもデフレではない国」について
次のように補足されています。
私が議論しているのは生産年齢人口の減少であって、
人口減や高齢化率の上昇ではありません。
「デフレ」ならぬミクロ経済学上の値崩れは、
日本のように生産が高度に自動化・機械化され、
生産年齢人口が減少しても生産力が減少しない国
でなければおきません。
ロシア、東欧、ジンバブエなどはここで外れます。
(その他にも続きますが、後略)
まあ、「デフレの正体」執筆時にここまで考慮されていたかは置いておき、
このような形で論点を絞っていらっしゃいます。
まさに「公開された一つの仮説」が批判にさらされることで
今後、より完成した説になっていく、という典型例なのかな、と思います。
もちろん、現在の藻谷氏の説には、もっと補完すべき点があろうかと思います。
藻谷氏は今も日本中を回って、現場の声を聴き続けていらっしゃいますので、
それらを踏まえた本をもっともっと出版していってほしいですね。
前述の通り、この状況を受けた処方箋についても書かれています。
が、こちらについては、本書を読んで頂ければ良いのかな、と思います。
ご興味のある方は、ぜひご覧ください。
最後に。
藻谷さんに関連する記事を幾つか書いています。
よろしければご覧ください!
・半年ぶりに藻谷さんの講演会に行ってみました!(2015年11月20日広島県庄原市)
・藻谷さんの「デフレの正体」は「里山資本主義」などで補完すると良いですよ
・【人間が大きく見える里山づくり】シンポジウム-地方創生と地域福祉がつながったお話-
・木材の大きな可能性に取り組む! 岡山県真庭市の銘建工業 -シンポジウムより-
・地域でつながる【周防大島のジャム屋さん】 -シンポジウムより-