女性の目を通して描かれた江戸末期~明治期の〔下級武士の暮らしぶり〕が興味深い!【武家の女性】

 

先日、宮本常一氏による江戸時代~明治にかけての「ふつうの人々(農民)の暮らしぶり」を描いた本忘れられた日本人のご紹介をしました。

今回は、山川菊栄氏の祖母、母の話などをもとに、江戸時代末期~明治時代の下級武士の暮らしぶりを描いた書「武家の女性」のご紹介をします。

本書では、主婦の日々、手習い子、お縫子、身だしなみなどと題された章があるように、当時の女性の暮らしぶりを中心に描かれていますが、女性の話だけに限らず、広く武士の暮らしぶりも描かれています。

拝読し、思わず唸るような、意外だったり、興味深い話が多々ありましたので、幾つか挙げさせて頂きます。

 

1.ひと言で武士階級といっても、石高によって、まったくもって暮らしぶりは違っていました

500石以上の石高がある武士は、収入が多い部類となり、比較的豊かな生活をしていました。

200~400石くらいの武士は、当時の風習から家来を2~3人もったり女中をおいたり、格式に応じて相応のものを整える必要があったため、借金のある家も多く、一番生活が苦しかったそうです。

100石以下の平士(下級武士)は、農業、機織りなどの内職を許されており、貧乏ながら何とか暮らせていました。ただ、内職をしていたとはいえ、なるべく家来をおくようになっていたので貧乏だったのでしょうね。

また、上級武士のような特権を持たない下級武士は、生活のため勤労の習慣を持ち、技能の習得に励んでいました。

このため、明治維新となり武士の特権が無くなった際、政治、産業、教育などの分野で活躍したのは、この下級武士階級出身の人々が多かったようです。

 

2.「家を継ぐ」ことが何よりも大切にされていました

多くの場合、家督を継ぐ長男は、手厚く教育を受け、武芸を仕込まれます。一方、次男、三男、娘などは、まったくもって重要視されず、独身のまま家に居続ける人もいたそうです。

また、当時の女性は、14~17歳という早いうちに結婚していました。早いうちから、姑の腕で嫁を一人前の主婦に仕込むためです。何年も何年も手取り足取り仕込むうちに、実の娘との関係以上に嫁姑が親密になることもあったそうです。

そして、今ではまったく信じられないことに、妾をもつことは珍しくありませんでした(とは言え、それほど多くはなかったようです)。何と、決まりにより、嫁と妾が同居することになっていたのです。これも基本的に、家を存続させることが目的のようです。

江戸時代末期の武士は、俸給生活者、すなわちサラリーマンのようなものでした。ただ、禄(給料)は、個人ではなく、家に対して与えられていたので、これが「家を守ること」が大切とされた要因の一つだと思います。

 

3.著者の菊栄氏が書かれた印象深い文章があります

それは。

一体に、われわれの考えるほど当時の女たちが不幸だとはいえません

そういう中にばかりいれば、その状態を自然として、ほかの状態を考えなかったのです。(中略)

その中に生まれ、その中に死に、それ以外の状態を知らなかった人々にとっては必ずしも不幸とは限らなかったのであります。

先日ご紹介させて頂いた忘れられた日本人でも、「貧乏があたり前と思っていたから別に不幸もなかった」との一文が出てきます。

この「武家の女性」では、特に女性は幼い頃より「女大学」などの書を素読し、人に仕える、犠牲・服従があたり前として育っている、とありますので、当時の教育による影響が大きかったように思います。

現代の視点では、まったくもって不健全で望ましくない風習ですが、、、外部情報に開かれておらず、それがあたり前だと考えられていた環境では、人々はその中で、その環境なりに生き生きと大らかに生きるよう工夫してきたのだと思います。

また、ちょっと話が飛躍しますが、次のように思いました。

封建的な、自由の制限されていた世界では、それなりに目一杯、精いっぱいに生きていけました。

そして封建制度が崩れ、外部の情報に開かれ、より自由度が高くなると人々は、自由への戸惑い、より広い世界での自らのアイデンティティの確立や生きる軸・糧を求めて葛藤していく様は、世の東西限らず共通しているように思いました。ちょうどエーリッヒ・フロムの「自由からの逃走」を思い出した次第です。

それならば、より広い世界に開けることは苦悩に繋がるため、望ましくない。結局は「情報が遮断された狭い世界の方が幸福だ」と言えるのかというと。。。

それは違うと思います。

より広い世界で葛藤し、統合的に新しく、より広い世界観を確立することこそ、人間の進歩、進化ではないかと思います。

以上です。

本書「武家の女性」も、藤原正彦氏の「名著講義」に掲載されていたことから拝読しました。

今回も読んでみて、良かったと感じます。

ぜひ、ご一読されてみてはいかがでしょうか。

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