中村元氏訳【ブッダのことば】の解説部分に注目! 仏教成立の経緯がよく分かりますよ。 《原始仏教・原始仏典について》

 

仏教研究の第一人者である中村元博士が翻訳された本「ブッダのことば-スッタニパータ」という、超有名な本があります。

スッタニパータとは、「たていと(=スッタ)」「集成(=ニパータ)」という意味です。現在に伝わる原始仏典では、小部経典の第五巻に収蔵されています。

その素晴らしい内容については別のブログ記事でご紹介するとして、今回は本書内の秀逸な解説の内容について、二点ほどご紹介させて頂きます。

一つ目は、「仏教成立の経緯」がうまくまとまっていることです。

本書では、ブッダ入滅後、大乗仏教に至るまでの経緯を6段階で示されています。

【第一段階】B.C.268年より前

ブッダ入滅後、仏弟子たちは、教えの内容を簡潔な形でまとめ、韻文の形で表現しました。頭韻をふんだり、押韻や語呂合わせなどもあるようです。僧侶たちは「詩」を暗唱・詠唱して、教えの内容を伝えてきたのです! それゆえ、時代を経ても、あまり内容は変更されていないのではないかと思われます。

※韻文とは、一定の規律に従って書かれている文章のことです。一方で散文とは、それら規律の無い一般の文章です。

【第二段階】B.C.250~150年頃

第一段階の頃より伝えられてきた韻文や詩句に、種々の説明が加えられた時期です。韻文ではなく、散文で説明書きが加えられたのです。

【第三段階】

仏説として伝えられたものが集成・編集され、経蔵(経典の部分)が成立した時期です。併せて、戒律の集成説明書である律蔵も成立しました。

【第四段階】

この時期、原始仏教は細かな部派に分かれていきました。諸部派での諸説に対して、統一的解釈を行うという目的で論蔵がまとめられていきました。それまでに成立した経蔵と律蔵を加えて、現在につながる三蔵(経・律・論)が成立した時期です。

【第五段階】紀元前後

経典がサンスクリット語訳されたり、漢訳されていった時期です。若干はチベット語訳されたものもあるようです。

【第六段階】紀元後

大乗仏教が成立していきます。ご存じのとおり、大乗仏教が中国経由で日本に入っていきます。ちなみに、チベットへも大乗仏教が入っていきました。

 

第三段階と第四段階の時期は今一つ分かりませんでしたが・・ 本書の解説文では、この辺りの内容が要領よく分かりやすく書かれています。

ちなみにスッタニパータは、詩句(韻文)の部分が第一段階の時期、説明文(散文)の部分が第二段階の時期に書かれました。スッタニパータはパーリ語で書かれていますが、現地で使われていたマガダ語の影響があることから、本経が最古級の経だと考えられているのです。

 

二つ目です。

スッタニパータって、アジア諸国では現代でもよく読まれているのです。

例えばスリランカでは。結婚式の前日、僧侶を招待して祝福の儀式を行うのだそうですが、スッタニパータの一節である「慈しみ」「宝」「こよなき幸せ」を唱えるのだそうです。その後、説教や祝福が行われるのだそうですよ。

スッタニパータでは、仏教用語があまり使われることなく、たとえ日本語訳でも格調高く美しい文章で、平易な表現で大切なことが書かれているのです。

アマゾンで見ると、初版は1958年に刊行されているのですね。驚くほど昔から綿々と読み続けられてきた「ブッダのことば-スッタニパータ」を、一度は読んでみられると良いと思います。

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